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姫野秀喜の「確実に成功するための不動産投資の学校」

不動産投資、表面利回り6%でも毎年損失?基本の5つのリスク 不勉強こそ損の元凶

文=姫野秀喜/姫屋不動産コンサルティング株式会社代表
不動産投資、表面利回り6%でも毎年損失?基本の5つのリスク 不勉強こそ損の元凶の画像1
「Getty Images」より

「最後は不動産」といわれるように、ビジネスや株などで稼いだお金の行き着く先は不動産というのが定番です。それは不動産がその他の投資に比べて非常に安定しているという特性があるものだからです。

 そんな不動産(投資)ではありますが、不動産投資も投資である以上、リスクが存在します。そのため、リスクを正しく認識し、適切に対応する必要が出てきます。本日は不動産の主なリスクについてご説明します。

 なお、「リスク」とは、学術用語的には期待値に対する「確率」を意味する言葉ですが、本稿では、わかりやすさの観点から、多くの方が抱くイメージ、すなわち「リスク=危険、落とし穴、罠」という意味合いで用いますことをご了承ください。

不動産投資に付随する様々なリスク

 不動産投資には様々なリスクが存在しますが、それらは下記の通り、天災系リスク、政治的リスク、人災系リスク、マーケットリスク、売買で騙されるリスク等に分けられます。

不動産投資、表面利回り6%でも毎年損失?基本の5つのリスク 不勉強こそ損の元凶の画像2
『確実に儲けを生み出す不動産投資の教科書』(姫野秀喜/明日香出版社)

【天災系リスク】

・地震・火事・台風・洪水等リスク

・シロアリ、害虫等のリスク

【政治的リスク】

・税制変更によるリスク

・政治不安によるリスク(特に海外など)

【マーケットリスク】

・人口減少による空室リスク

・家賃下落リスク

・金利上昇リスク

・為替リスク(海外の場合)

【人災系リスク】

・滞納リスク

・夜逃げリスク

・犯罪に使われるリスク

・自殺のリスク

【売買で騙されるリスク】

・割高で買うリスク

・儲からない(損失が出る)ものを買うリスク

・割安で買いたたかれるリスク

天災系リスクとその対応方法

 不動産のリスクと聞いて真っ先に思い浮かぶのが、地震や火事、台風、洪水などの天災系リスクではないでしょうか。日本列島は地震大国であり、台風の通り道でもあるので、毎年のように各地で起きる災害の報道を見ることも多いでしょう。不動産は動かすことができない資産なので、こういった自然災害などの天災に見舞われてしまうとひとたまりもありません。

 その天災系リスクを抑えるためには、そもそも天災にあいにくいエリアを選定するということが大切です。地域にもよりますが役所に行くとハザードマップなどが配布されていますので、自分が購入するエリアにどういった災害が起きるのかを事前に調べることができます。台風については統計局のデータから過去の降雨量などを見ることで、どのエリアがより雨が多いかなどの情報を知ることができます。

 とはいえ不動産投資では、どうしても災害が発生する可能性があるエリアに投資する必要があるときもあるでしょう。

 そんなときに役立つのが火災保険です。火災保険は火事だけでなく台風や洪水、建物に自動車が衝突した際の損壊などに対応していますので、リスクを抑えるためにもそのエリアの特性に合った保険を選択しましょう。エリアの特性とは、具体的には高台の物件であれば洪水の保険は付けないでよいが、海辺の物件には付けるなど、発生する災害に合わせて適宜設定するということです。

 注意が必要なのは地震保険です。地震保険の金額は火災保険の半分までと決まっているため、火災保険の金額を安く設定してしまうと、地震で建物が崩壊したときにもらえる保険金額では建物の再建築が難しくなるからです。保険金額を上げると保険料金が上がってしまうため、再建築する金額との兼ね合いで適正な保険金を設定しましょう。

 このような天災系リスクは、起こってしまえばどうしようもないのですが、そもそも起きる確率が低く、その多くは保険によりカバーすることができますので必要以上に恐れなくてもよいと考えます。

政治的リスクとその対処法

 不動産はマクロの政治経済にも影響を受けます。そのうち政治的なリスクの代表格といえるのが税制変更によるリスクです。税制変更のリスクとは、これまでは合法だった節税スキームが税制の変更で使えなくなってしまうというリスクです。

 最近の例でいえば、金の売買による消費税還付のスキームなどがあります。金の売買による消費税還付スキームとは、金を売買することで消費税の課税売上を計上し、物件購入時の仮払消費税を還付してもらうというスキームです。

 私は個人的にこの手のスキームは推奨していませんが、これまでできていたことがお上の胸三寸で変わってしまうということについてはリスクを感じざるをえません。

 ちなみに、なぜ消費税還付スキームを推奨しないかというと、そもそも業者にしっかりとお膳立てされた消費税還付スキームの物件は、儲からない物件ばかりだからです。本当に儲かる物件は消費税還付スキームの準備をしている余裕などなく、瞬間蒸発してしまうからです。

 また、海外の不動産を購入される方は、その国の政治不安などもしっかりと把握したほうが良いでしょう。政治的に安定していないと、せっかく購入した物件の所有権が設定できなかったり、物件の着工などが遅れたりと、思わぬ損失を被ることになるからです。

 海外の不動産を購入する方の多くは、エージェントを通じて購入していると思いますが、そもそもそのエージェントが信用できるのかをしっかりと見極めなくてはなりません。さらに、エージェントの言うことを鵜呑みにせず、現地の状況を自分で確かめなくてはなりません。

 そのような事前調査ができず、政治的にも不安が残る場合の対処法はただ一つです。それは、よくわからない投資は避けるということです。我々は一か八かといったバクチを行っているのではなく、限りなく負けないように勝ために不動産投資を行っているのですから、わからないものには手を出さないというのが最も重要な対処法なのです。

マーケットリスクとその対処法

 不動産投資におけるもう一つのマクロ的リスクといえば、マーケットにおけるリスクです。マーケット(=市場)とは一般に物を交換する売買市場、お金を交換する金融市場、労働を交換する労働市場などを言いますが、不動産投資では特に賃貸の需要と供給を均衡させる賃貸市場についてみなくてはなりません。

 賃貸市場におけるリスクの代表格は人口減少による空室リスクです。2020年現在、日本の都道府県において県単位で人口が増加しているのは、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、沖縄県の5都県のみとなっており、残りの42道府県は県全体で見ると人口減少のフェーズに入っています。

 もちろん、市区町村単位で見るとまだまだ人口が増加している地方都市は多いのですが、アパートを建てれば自動的に入居者が入っていた時代とは根本的に異なっています。この人口減少による空室リスクを防ぐために大切なのがエリアの選定です。同じ地方都市でも人口が増加しているエリアや賃貸需要が盛んなエリアを選び出し、そこに物件を持つということです。

 地主などは自分の持っている土地にアパートを建てることが多いですが、自分の所有する土地は賃貸需要があるエリアなのかをあらかじめ調べたうえで、建てなくてはなりません。住めば都と言いますが、自分自身が住んでいる土地や所有するエリアには愛着がありますので、ついついひいき目に賃貸需要を見積もりがちになるかもしれません。郷土愛は素晴らしいものですが、投資は数字です。客観的な需要予測の下に行うよう心がけましょう。

 マーケットリスクのもう一つが、家賃下落のリスクです。家賃下落は、築年数が古くなることによる下落と、需要が減少することによる下落の2つの要因により引き起こされます。特に新築物件は新築プレミアムと呼ばれる高い家賃設定がされているため注意が必要です。たとえ新築で利回り8%を謳う物件も20年も経てば築古となり、6%くらいになるため、将来下落した利回りでも融資の返済や税金の支払いなどができるかをあらかじめ計算しておかなくてはなりません。

 また、需要の減少による家賃下落に関しても同様に、将来的に下がるであろう家賃を想定して利回りを計算しなおし、返済や税金の支払いが滞らないかどうかを見極める必要があります。業者が提示する現状の家賃のみで判断せず、将来を見越したシミュレーションを行うことでこの家賃下落のリスクは大部分がカバー可能でしょう。

 マーケットリスクという点では、金利の上昇リスクも存在します。不動産投資は多くの場合、借入により物件を購入するため、金利が上昇すればその分支払いが増えてしまいます。現在の日本は低金利が続いていますが、これがいつまでも続くことはないでしょう。

 金利の上昇リスクは個人の力ではどうにもならないことの一つではありますが、それほど恐れることはありません。というのも、仮に金利が急激に上昇した場合でも、金融機関側でなんらかの対処を行ってもらえる可能性が高いからです。具体的には支払上限を設けたり、支払猶予期間を設けたりといった方策です。それにより金利上昇により一瞬で破産してしまうなどということは避けることができます。

 もちろん支払上限を設けたりすれば、借入金元本の減りが遅くなるため将来的に残債が大きく残る可能性はありますが、元本の繰上返済などを行うことで破産せずに乗り切ることができるでしょう。

 最後に海外の不動産を売買する場合は、為替リスクなども加味する必要があるでしょう。現地調査や現地の状況を確認しづらい海外不動産自体あまりおススメはしていませんが、海外物件を購入するのであればより有利な為替レートを選ばなくてはなりません。海外の物件から入ってくる家賃なども、厳密には月ごとに為替レートが異なるので、どのレートを適用するかなど決算や確定申告時に税理士と相談して行ってください。

人災系リスクとその対処法

 不動産投資は基本的に入居者に物件を貸出し、その対価として賃料を頂くというものです。人災系リスクとは、その入居者そのものが引き起こすリスクのことです。

 まず、最も多いのが家賃の滞納リスクです。家賃の滞納については初期対応が大切です。滞納をされたら1日でも2日でもできるだけ早く連絡を取り、支払うように約束を取り付けることが重要です。そうしないと、支払いが1カ月遅れ、2カ月遅れ、気づいてみれば数カ月分の家賃を滞納されてしまい、取り返しのつかない状況に陥るからです。

 現在の多くの物件では家賃保証会社を通して入居付をすることが普通になりつつありますので、滞納リスク自体はカバーされつつありますが、昔からの連帯保証人制度を用いている入居者については注意が必要です。

 家賃の滞納リスクと同時に発生しやすいのが夜逃げリスクです。ある日突然物件から姿をくらましてしまう夜逃げ。夜逃げでは、入居者は身の回りの物だけを持ち出して逃げるため大きな家具や布団などを室内に残していく場合が多いです。そういった残置物は原則として大家さんが勝手に処分することができないため、非常にやっかいです。

 残置物を勝手に処分して、あとから損害賠償を請求されるなんてことも可能性としては存在するためです。そのため残置物をアパートの空きスペースにわざわざ保管したりしなくてはなりません。気の利いた管理業者であれば、入居者にそれとなく「残置物は管理会社側で処分して良い」という旨の書面を書かせたりするのですが、そういった書面でもない限り、残置物の処分ができず、次の入居者を探すこともできないのです。

 物件を犯罪に使われるというリスクも存在します。入居者が室内で大麻や脱法ハーブなどを栽培していたり、他人のクレジットカードで購入した物品の受け渡し場所にされたりなど、所有者の顔が見えない賃貸物件が悪用されるリスクのことです。たとえ人が亡くなったりしなくても、犯罪や事件などに物件が巻き込まれてしまった場合は、告知事項などに該当してしまうため、将来的に物件の資産価値を下げることになります。

 資産価値を下げるリスクとしては、自殺のリスクも存在します。すぐに発見された単なる自然死であれば告知事項には該当しないのですが、自殺などはたとえすぐに発見されたとしても告知事項に該当してしまいます。

 そうならないためにも、入居審査や清掃、管理等をしっかりと行い、怪しい人が入居しにくい雰囲気をつくるように心がけなくてはなりません。

売買で騙されるリスクとその対処法

 最後は売買で騙されるリスクについてです。これは厳密に言えばリスクというよりは投資家としての不勉強が招く必然ではありますが、損をしてしまうかもしれないという意味でリスクと言えるので、あえて解説したいと思います。

 売買におけるリスクですので、買うときと売るときそれぞれにリスクが存在します。まず買う時のリスクですが、割高で買うリスクと儲からない(損失が出る)ものを買うリスクが存在します。割高で買うリスクとは、土地・建物の相場よりもはるかに高い価格で買うという意味です。安く仕入れて高く売るというのは商売の基本なので、業者が提示する販売価格が多少高い分には問題はありませんが、著しく高く買うのは投資として問題があると考えます。

 著しく高く買うということは、売るときに損失が出る可能性が極めて高いということになります。投資は購入し、保有している間に家賃収入を得て、売却時に売却益を得ることで完結します。その売却時に高い確率で損失が出ることが予想される物件を購入することは投資として避けるべきことです。

 儲からない(損失が出る)ものを買うリスクとは、利回りが低すぎて保有している間の家賃収入が残らない物件を買うリスクです。稼働表面利回り(稼働率×表面利回り)が8%を切る物件は、家賃収入から銀行返済や管理費、所得税・住民税・固定資産税などの各種税金を支払ってしまうと手元にほとんどお金が残らないという状態になります。さらに稼働表面利回りが6~5%以下になると、毎年の税金支払いなどを補てんしなくてはならなくなる(損失が出る)ようになります。

 特に6~5%くらいの稼働表面利回りの場合は注意が必要です。これくらいの利回りだと月々の銀行への支払自体は、家賃収入とトントンなので、一見損失が出ていないように見えるからです。しかし、実際には税金などの支払分がマイナスになることが多いのです。つまり、稼働表面利回りが6~5%くらいの物件を購入してしまうと、月々の支払いはできているはずなのに、なぜかお金が減っているという状態に陥ってしまうので気を付けましょう。

 最後に割安で買いたたかれるリスクについても言及します。割安で買いたたかれるリスクとは、読んで字のごとく相場よりもはるかに安く買われてしまうというリスクです。

 例えば、売却の仲介を引き受けているにもかかわらず、積極的に売却のための宣伝をせず、しばらく経ってから、売主さんに安い金額で自社買い取りを勧めてくるような業者がいたら要注意です。

 相続で引き継いだ物件など、愛着や思い入れなどなく、さっさと現金化してしまいたい場合には割安で買い取ってもらっても問題ないかもしれません。しかし、ある程度の時間をかけて相場の金額で売却したい場合には、相場金額や業者の選定について気を付ける必要があるでしょう。

 これら売買におけるリスクはどれも投資家自身の不勉強によるところが大きいリスクです。物件を購入する前に相場の金額をきちんと調べ上げ、相場の家賃や返済が滞らない稼働表面利回りを把握しておけば、そもそも割高な物件や儲からない(損失が出る)物件を購入することはないでしょう。また売却時にも周辺の相場や売却を依頼する業者の評判などを調べておけば、それほど大きな間違いをしてしまうことは少ないでしょう。

 スルガ銀行の不正融資問題の発端となったカボチャの馬車事件でも、投資家が事前に相場家賃や土地・建物の相場を調べておけば、騙されることはなかったと思います。カボチャの馬車は極端な例ではありますが、悪意があってもなくても結果として騙されてしまうリスクは存在するわけです。読者様におかれましてはそのようなリスクを避けるためにもくれぐれもしっかりと学習して下調べを行い不動産投資に挑戦してください。

姫野秀喜/姫屋不動産コンサルティング代表

姫野秀喜/姫屋不動産コンサルティング代表

 1978年生まれ。福岡市出身。九州大学経済学部卒。
 アクセンチュア(株)で日本を代表する大企業の会計・経営コンサルティングに従事。激務の傍ら不動産投資を行い大家さんとなる。会社員時代に多くの同僚が悪徳不動産屋に騙され、もうからない物件を購入している現状を打破したい思いから宅建を取得し独立・開業。年間100件以上の実地調査から得られる詳細な情報と高い問題解決力で、一人一人に合致した目標、戦略の策定から購入、融資、賃貸経営改善までを一貫してサポート。
 週刊ダイヤモンド、週刊ビル経営、日経ARIA、健美家ニュース、BLOGOS、マネーボイスニュースなど掲載記事多数。
 著書に「確実に儲けを生み出す 不動産投資の教科書(明日香出版社)」、「誰も教えてくれない 不動産売買の教科書(明日香出版社)」、「売れない貸せない利益が出ない負動産スパイラル(清文社)」がある。
姫屋不動産コンサルティング株式会社

Twitter:@himeya_rec

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