長引くコロナ渦は、感染の不安に加え、経済状況の悪化による生活不安の増大など、人々の心に強いストレスを与え続けています。残念ながら、新型コロナウイルス感染症の根本的な解決がいつになるのか、今のところまったく見えていません。
こうした厳しい状況から、うつ状態に陥ってしまうケースもあり、それは”コロナうつ”とも呼ばれています。このコロナうつに対抗できる方法があれば、日々の生活に取り入れたいものです。
そんななか、オメガ3脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)に抗うつ作用があることは、さまざまな研究から報告されています。DHA、EPAは魚に多く含まれる脂肪酸で、アマニ油やえごま油の主成分であるアルファリノレン酸もオメガ3脂肪酸です。これらオメガ3脂肪酸には抗炎症作用もあります。うつ病や精神疾患には慢性炎症が関連しているとされることから、オメガ3脂肪酸の持つ抗炎症作用がうつ病などに有効だと考えられています。
若い世代を中心に魚離れが進んでいますが、実はDHA、EPAの摂取量は、どの世代でも不足しています。日常生活でコロナうつに対抗するためには、積極的に魚を食べるべきなのです。DHA、EPAなどのオメガ3脂肪酸は必須栄養素ですし、副作用はありません。しかし、継続して摂取しないとせっかくの効果が発揮できません。ですから、3度の食事のいずれかは魚食にして、抗うつ作用を持続させましょう。
魚フライやツナ缶はNG
DHA、EPAが多い魚は、アジ、イワシ、サバ、サンマなどの青背の魚のほか、サケ、イクラ、ウナギ、マグロのトロ(赤身は少ない)などです。生で食べるのが一番効率よくDHA、EPAを摂取できますが、煮ても焼いても良いので、とにかく魚を食べることが大切です。ただし、フライや天ぷらなどはNGです。揚げ油に使うサラダ油などには、摂取を控えるべきリノール酸が多いので、逆効果になりかねません。
魚料理が苦手な方は、調理済みのサバの味噌煮やアジの開きなどがコンビニでも売られているので、活用しましょう。手軽なのは缶詰です。缶にDHA、EPAの含有量が記載されているものを選びましょう。ただし、ツナ缶はNGです。ツナ缶に使われている魚にDHA、EPAはごく微量しか含まれていませんし、オイル漬けに使われている大豆油などには、やはりリノール酸が多いからです。ツナ缶でDHA、EPAが摂取できると思ったら逆効果です。サバやイワシ、サンマ、シャケ缶を食べましょう。
魚食とアマニ油、えごま油でオメガ3生活
魚にはDHA、EPAのほか、良質な動物性タンパク質やビタミン類も含まれますので、お子さんの心の安定や体の成長にも欠かせません。
アマニ油やえごま油に多いアルファリノレン酸もオメガ3脂肪酸です。酸化しやすいため高温調理には不向きですが、出来上がった温かい料理にかけたりする分には問題ありません。また、ノンオイルのドレッシングやポン酢と合わせて、”オメガ3ドレッシング”としてサラダなどにかけて食生活に取り入れましょう。
どうしても魚が苦手という場合は、DHA、EPAのサプリメントを活用しましょう。各社から販売されていますが、DHA、EPAの含有量のバランスの良いものがお薦めです。
どんな状況の時でも食事は欠かせません。1日1回の魚食とアマニ油、えごま油の”オメガ3食”でコロナうつを防ぎましょう。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)
※参考資料
オメガ3 系脂肪酸による精神疾患へのアプローチ
日本生物学的精神医学会誌27(4):182─187, 2016
ツナ缶やリノール酸の過剰摂取の害については、こちらをお読みください。
『金スマ』の「ツナ缶の油は捨てずに使う」に疑問…DHAは微量、健康被害の恐れも