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永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報

衆院北海道補選で自民“不戦敗”の裏事情…候補者擁立見送りは“親バカ”吉川元大臣の意向か

文=神澤志万/国会議員秘書
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吉川貴盛元農林水産大臣(写真:つのだよしお/アフロ)

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 4月25日に、衆参3つの選挙と名古屋市とうるま市の市長選挙が行われましたね。すでに報じられている通り、菅義偉政権初の3つの国政選挙はいずれも野党候補が勝利しました。自民党は候補者擁立を見送った衆議院北海道2区を含め、全敗です。

 名古屋市長選挙も河村たかし氏(地域政党・減税日本代表)の再選でしたが、かろうじて、うるま市長選挙は自公推薦の中村正人氏が初当選しましたね。同選挙は来年の沖縄県知事選挙の前哨戦といわれていましたから、これからも注目です。

 菅政権の今後に影響する選挙なので、永田町の住人たちは、みんなやきもきしながら結果を見守っていました。残念ながら投票率は低迷し、有権者の関心は低かったように思いますが、まさかの自民党連敗に永田町は「プチ激震」です。

 確かに冷静に分析すれば予想通りだったとも言えるのですが、どこかに自民党の組織力の底力を見たいという希望があったのだと思います。特にベテラン秘書たちは選挙期間中にマスコミから選挙情勢のデータが回ってくるたびに一喜一憂し、さらに、それらを自分たちなりに分析し合うのが刺激的で楽しみです。

 国政のゆくえを予想することが楽しいなんて不謹慎かもしれませんが、まるで自分が選挙の「軍師」になったかのように分析するのも勉強です。いずれ自分が選挙を仕切るときにも役立ちますし、他人の選挙情勢の分析は「ベテラン秘書あるある」なのです。

北海道の衆院補選で自民“不戦敗”の裏側

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 ここで、神澤なりの分析を披露してみますね。

 まずは北から、衆議院北海道2区の補欠選挙。自民党の元農林水産大臣・吉川貴盛氏の辞職に伴い、行われました。吉川元大臣の辞職理由が鶏卵業界からの不適切な献金問題だったことから、自民党は候補者の擁立を見送り、何度も挑戦している松木謙公候補が野党共闘の末に勝利しました。

 組織票が動かず、投票率が前回から26.66ポイントも落ちたことに驚きました。自民党が候補者擁立を見送った背景には、自民党北海道連の会長を長く務めていた吉川元大臣の意向が強く反映されていると言われています。吉川元大臣は次の総選挙で息子を候補者にしたいため、自民党の候補者擁立を認めなかったとか。

 こう書くとひどい人みたいですが、吉川元大臣は実はとてもいい方で、人柄は最高です。擁護するつもりはないですが、不適切とされた献金問題も、おそらく人のよさから処理を曖昧にしてしまったのだと思います。ただ、ものすごい親バカなんです。僭越ながら、息子さんたちはそんなに優秀ではなさそうです。

 長男は北海道議会議員ですが、議員としての評判は良くも悪くもない程度ですし、次男は道連の反対で北海道議の候補になれませんでした。統一地方選挙の直前に農林水産大臣秘書官に就いたことで、選挙の準備などできないと批判されていました。もちろん「パパの秘書官」ですが、暴力的な発言が問題になったこともあり、威圧的な雰囲気の方です。三男は「パパの公設秘書」として議員会館で勤務されていましたが、とてもおとなしく、秘書としての資質にも疑問がある感じでした。

 そういえば、吉川元大臣は息子さんたちを公設第1秘書、第2秘書に登録していた期間が長く、「議員歴が長いわりに『家族経営』なのは、任せられる秘書がいないってことだよね。道連の会長なのに大丈夫なのかな」と秘書たちの噂になっていたこともあります。

 次点の鶴羽佳子氏も健闘されましたね。「ツルハドラッグ」という業界最大手のドラッグストアチェーンがありますが、創業者の鶴羽肇さんは今の旭川のご出身で、道民にもとてもなじみがあるんです。鶴羽候補はご親族ではないようですが、知名度的に有利だったのかなと思います。

 低投票率の中で善戦し、存在感を示したのが、得票数3位の山崎泉氏です。日本維新の会からの出馬でした。

鈴木宗男議員の存在感が際立った理由

 北海道2区というのは、とてもわかりにくいです。2014年の総選挙では、松木氏は維新の党から出馬しています。その前の2012年の総選挙では、「維新の党」の前身である旧「日本維新の会」の高橋美穂氏が当選していますが、その高橋氏を松木氏が追い出す形となりました。だから、有権者たちも混乱したと言います。

 今回は、鈴木宗男参議院議員(日本維新の会北海道支部代表)が自身の秘書で元市議会議員・道議会議員の山崎泉氏を候補にしました。もっと前は、松木氏は宗男議員と「新党大地」で一緒にがんばっていたのですけどね……。

 山崎候補の選挙戦では、宗男議員の盟友として知られる歌手の松山千春さんも応援に駆けつけ、少しだけ歌を披露してくれたそうです。余談ですが、歌手がフルコーラスを披露してしまうと「有権者への寄付行為」となって、選挙違反の取り締まり対象になってしまいます。そのあたりを熟知している松山さんは、サビの部分を少しだけ歌ってくれるのです。聴衆としては「もっと聴きたい!」と思うでしょうが、そういう事情があるのです。

 この選挙でも、さすが宗男議員と思うことがたくさんありました。たとえば、告示日に十勝の自民党の支部長・中川郁子氏(故・中川昭一元財務大臣の妻)を宗男議員が代表を務める地域政党・新党大地が推薦すると記者発表して話題を集めたり、別の自民党支部長に応援演説をさせたりすることで、自民党支持層にも食い込んでいました。これで、山崎候補は「自公が無視できない存在」だと印象づけられたわけです。

 次の総選挙では、日本維新の会は北海道ブロックで1議席は獲得しそうな勢いです。新党大地の約20万票に加え、維新の支持者も一定数いることから、今後の飛躍に注目しています。

 それにしても不思議なのは、日本維新の会という政党の立ち位置です。永田町歴の長い神澤でもわかりません。野党共闘で出馬した松木氏が圧勝しましたが、「日本維新の会も野党なんじゃないの?」という疑問があるのです。他の選挙でも「野党共闘」が叫ばれていましたが、いずれも日本維新の会はその中に入っていません。

 国会議員26名という小さな政党ながら大阪では圧倒的な存在感で、他の野党とはまったく歩調を合わせない独特の政策を進めています。こういう政党が次の総選挙で飛躍するのか、失速するのか、先が見通せません。だからこそ、気になるのかもしれません。

 次回は、参議院広島選挙区の再選挙について書かせてくださいね。

(文=神澤志万/国会議員秘書)

『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。 amazon_associate_logo.jpg

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