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小谷寿美子「薬に殺されないために」

市販の頭痛薬が効かなくなった…薬物乱用性頭痛の恐れ、カフェイン&鎮静薬依存のリスク

文=小谷寿美子/薬剤師
市販の頭痛薬が効かなくなった…薬物乱用性頭痛の恐れ、カフェイン&鎮静薬依存のリスクの画像1
「Getty Images」より

「Pちゃん(私のあだ名)、頭痛薬飲んでも効かなくなっている気がする。これって『薬の慣れ』なの?」

 友人から薬について相談を受けました。「薬を月何回くらい飲んでいるか?」と尋ねたところ、「10回以上だと思う」と答えてくれました。そして、「頭痛薬は何を使っているか」を質問しました。「イブが一番効いたんだけど、それも効かなくなってしまった」のだそうです。

 おそらく「薬物乱用性頭痛」になっていると考え、「イブをやめて病院行きな」と伝えました。実は「イブ」(エスエス製薬)のような「配合剤」の頭痛薬は乱用が起こりやすくなります。配合剤は「効いた!」という実感が出るのですが、その裏には罠があるのです。

 配合剤の頭痛薬には3つの成分があります。鎮痛薬、カフェイン、鎮静薬です。鎮痛薬はアセトアミノフェンやイブプロフェンといったものです。市販薬ではメジャー成分ですので、ご存じの方が多いと思います。

 そして、カフェインです。コーヒーで有名ですが、ここでは医薬品としての無水カフェインです。コーヒーのように水に溶けた状態で含まれるのがカフェインで、これを抽出して精度を上げ粉の状態にしたものを無水カフェインといいます。無水は水分を含まない分、見た目のグラム数が小さくなりますが純粋なものですので、効果は大きくなります。鎮静薬は「○○尿素」と書いてあるものです。脳の神経興奮を抑えて痛みを感じにくくするという効果があります。

問題なのは、カフェインと鎮静薬

 鎮痛薬そのものには依存性はありません。配合されているカフェインと鎮静薬が問題なのです。カフェインは依存性がある物質です。拙著『その薬があなたを殺す!』(SB新書)を書いた当時の私は完全なる「カフェインレス聖人」でした。普段の飲み物は水とお湯だけでしたし、外では大人のくせにジュースを飲んでいました。それが月日を経て「コーヒーで体を清める」人間になってしまいました。あるとき、昼休み中にコーヒーを飲んで気づいてしまったのです。体の重だるさが一気に引いて、頭の重さも引いて、体がキレッキレになるのを感じました。先人たちはこうして「ジャパニーズビジネスマン」をやっていたのでしょう。大げさですが「24時間闘えますか?」と言われたら「イケる!」と答えられる自信がありました。

 カフェインには血流量を上げる効果、神経を興奮させる効果があります。そして長い間常習していると、代謝酵素の誘導という現象が起こります。カフェインをどんどん分解できるように体が変わっていくということです。つまり、カフェインが効かなくなってくるのです。薬としてカフェインを飲んで、それを常習してしまうとカフェインの効果が悪くなっていくのです。カフェインは頭の重だるさをスーッと消すのですが、連用によりその効果が薄れていってしまいます。

 そして「○○尿素」と書いてある鎮静薬です。神経の興奮を抑えることで、痛みを感じにくくする効果があります。片頭痛の場合は、脳の血管が広がり、神経を圧迫→神経の過剰興奮により神経から物質を出す→この物質がさらに血管を広げる→これを繰り返すことが起こっています。ズキンズキンとした片頭痛が起こったときに、痛み自体を抑える鎮痛薬として神経の過剰興奮を抑える鎮静薬があることは、薬として理にかなっています。

 しかし、実はこの鎮静薬は連用により薬物依存を生じてしまうことがわかっています。この成分のために、また薬が欲しくなるということです。そのため医療用では「○○尿素」を鎮静薬として使うことは、ほぼなくなっています。しかし、市販薬では依然として配合されています。薬を連用するとカフェインは効かなくなるからもっと欲しくなるし、鎮痛薬は薬としてより欲しくなっていくことになります。

 その結果どうして頭痛がさらに出てしまうかは、詳しく解明されていません。「あの頭痛がまた起こるんじゃないか」と不安になるだけでも痛みが出ます。薬が効かなくなるので、痛みが取れずに残っているだけと考えることもできます。遺伝的性質という説もあります。しかし、原因となる薬を抜くと治ることはわかっています。

薬物乱用性頭痛の治し方

 これは原因となる薬を抜くというのが一番ですが、だからといって頭痛を我慢するわけにはいきません。だからこそ「頭痛外来」の受診により、医師という最強の味方を持っておくことを勧めています。

 頭痛外来では単に痛み止めを処方するだけではなく、多彩な薬を使いながら、複数の原因を一つひとつ取り除いていきます。主に、血管、神経、脳の3つを考えていきます。片頭痛の場合は血管と神経の薬をひとつずつ使い、いきなり痛くならない状態をつくって「予防」をしていきます。こうすることで痛みを起こす回数を減らしていきます。

 もちろん痛みが出たときは痛み止めを使いますが、これは今まで連用してきた薬以外のものを使います。締め付けるような痛みが特徴の緊張性頭痛の場合は、筋肉の緊張をとる薬と、神経の薬を使います。こうして頭痛が起きにくい環境をつくっていきます。その上で痛みが出たときは、今までとは違う痛み止めを使って痛みを取ります。違う薬でも痛みが取れることがわかれば、今までの薬で依存していた状態から抜け出すことができます。痛みが出る回数を減らし、日常生活を安定させていくと痛みが出るパターンが現れてきます。生理前だけ痛くなる、仕事をがんばった日に痛くなる、などです。

 依存しているかどうかは、1カ月に頭痛薬の通常包装分を使い切るかで判断するとわかりやすいです。「バファリンA」(ライオン)なら20錠包装で1箱分、「ロキソニンS」(第一三共ヘルスケア)なら12錠包装で1箱分、「イブA」ですと、24錠包装で1箱分となります。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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