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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

夏+コロナ禍で痛風が増加…中年男性の3割は“痛風予備軍”、コーヒーや乳製品に予防効果か

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの新規感染者は増加の一途を辿り、テレビのニュースやインターネット上は連日、コロナ関連の話題に溢れている。

 収束が見えない状況から感染予防も鑑み、健康診断の先送りをしたり、多少の健康不安があっても受診しないという人も少なくないようだ。こういった状況により、病気の発見が遅れる可能性もある。

 ところで、あなたは自身の「尿酸値」を把握しているだろうか。尿酸値が高いと痛風になるわけだが、コロナ禍に若い世代での痛風が増加傾向にあるという。歩けないほどの激痛といわれる“痛風発作”で発覚するケースも多い。そうなる前に痛風についての病識を持ち、予防を心がけてほしい。函館陵北病院総合診療科の舛森悠医師に、痛風について話を聞いた。

痛風とは

 一般に「尿酸値が高いと痛風」ということは広く知られているが、実際にはどういった理由で尿酸値が高くなり痛風発作のような痛みが出るのだろうか。

「痛風による痛みや腫れが出現するには、3つの段階があります。

1.体内でつくられるプリン体、食事中のプリン体が、尿酸へ分解される

2.血中の尿酸が高くなると関節へ溜まっていく

3.尿酸が溜まりすぎると痛風となり、関節が腫れて痛くなる

 このように、過剰になった尿酸が結晶化して関節に溜まるため、腫れや激痛が起きます」

 尿酸値が高いことに気づかず生活していれば悪化の一途辿ってしまうが、具体的にどの程度の数値になると注意すべきなのだろうか。

「健康診断で『尿酸が高い』と言われる場合は、『尿酸値7(mg/dl)』がひとつの目安になります。尿酸値が7となったら、薬で尿酸を下げる治療を始めるか、医師と相談する必要があります」

「風が当たっても痛い」ことから痛風と呼ばれるが、その痛みの出現は特徴がある。

「夏場に中年男性が片足を痛そうにして歩いている姿を見たことはありませんか。まさに、その症状が痛風です。痛風の9割は男性に起こりますが、女性にも起こりえます。部位はほとんどの場合、足の親指の付け根にできますが、稀に足首・膝・手首が腫れることもあります。関節が腫れ激痛が起きることを“痛風発作”といいますが、発作は24時間以内にピークに達し、通常10日~2週間で完全に消失します。繰り返すことが多く、痛風の患者さんのなかには、『あ、そろそろくるな』と、痛風発作の前兆がわかるという方もいます」

 痛風になる原因は、長年の生活習慣によるものが多く、なんといっても食習慣が大きく影響するという。

「アルコール、肉類・魚介類、砂糖入りソフトドリンク、果糖(果物ジュースやオレンジなどの果物)などを好んで摂取する人、また肥満傾向の人は発症リスクが高くなりますので要注意です」

 また、“意外なリスク”もあるという。それは、遺伝や男性ホルモンが関係しているケースだ。

「尿酸値が高い人は、30歳以上の男性に絞ると、およそ30%に達していると推定されています。つまり、中年男性の3人に1人は“痛風予備軍”といっても過言ではありません。男性の皆さんには、若いうちから痛風の発症リスクを下げる食習慣などを心がけていただきたいと思います」

治療と予防

 痛風発作の強い痛みに襲われた際は、直ちに病院へ行くべきだという。

「痛風の治療は、一般内科や整形外科で大丈夫です。痛みが強いときは、とにかく痛みを抑えるために鎮痛薬を使用します。実は、痛みが強いときに尿酸を下げようと頑張ってしまうのは、逆効果なのです。むしろ、症状を悪くしてしまう可能性があるため、痛みが治まってから2週間程度経過してから、尿酸値を下げるための治療を検討します。痛みがどうしても治まらなかったり鎮痛薬を使用できない時には、ステロイドという免疫を抑える薬を使用することもあります」

 痛風発作の痛みが治まったら終了ではなく、そこからが痛風治療の始まりである。症状に応じた服薬治療と、定期的な検診が必要となる。

「突然の痛風発作によって尿酸値が高いことに気づく人もいるので、普段からの心がけが重要です。一般的な予防対策はもちろん基本となりますが、実は近年、コーヒー・乳製品・ビタミンCが痛風を予防するかもしれない食品として注目されているので、これらを食事に取り入れてみるのもお勧めです」

【痛風予防対策】

・肥満防止

・野菜の摂取:尿酸の排出を助ける

・水分補給:水やお茶を1日1.5~2リットル摂取

・プリン体を控える:プリン体は1日400ミリグラム以内が目安

・禁酒・節酒:アルコール自体が尿酸を上げる

【1日のアルコール適量の目安】

・ビール:中瓶1本(500ミリリットル)

・日本酒:1合(180ミリリットル)

・焼酎:25 度/100ミリリットル

・ウイスキー・ブランデー:ダブル1杯(60ミリリットル)

・ワイン:グラス 2 杯(200ミリリットル)

「ウォーキングや水泳などの有酸素運動を適度に取り入れることは、肥満防止の面だけでなく、痛風予防につながるので、ストレスが多いコロナ禍だからこそ、密を回避した散歩でリフレッシュしたり、今まで忙しくてできなかった新しい趣味を始めるのもよいかもしれません」

コロナ禍に痛風患者が増加する理由 

 実は、夏は痛風が発症しやすい季節でもあり、コロナ禍とのダブルリスクがあると舛森医師は警告する。

「夏場はビールが美味しくなることもあいまって、痛風が流行します。よくあるパターンとしては、“夏に汗をかいた後にプリン体を多く含むビールをゴクり”です。汗をかいて脱水状態になるばかりでなく、アルコールの摂取も体を脱水傾向にします。実は医療の現場では、尿酸値は脱水の目安になることもあるくらいに、脱水によって尿酸値は上下しやすいのです」

 さらに、コロナ禍で痛風患者が増加する原因は、新しい生活様式が大きく影響していると考えられるという。

「コロナ禍で痛風や高尿酸血症患者が3割以上増加したとの結果が発表されています。その原因としては、以下が考えられます。

・出歩けないことによる運動不足

・運動不足や間食による肥満の増加

・オンライン飲み会で、1回あたりの飲酒量が増加

・通院のハードルが高くなることによる治療中断

 コロナ禍での“新しい生活様式”が、痛風になりやすいリスクを含んでいるといえます。リモートワークが一般化して運動不足になり、さらに暑い夏に家での飲酒が増える人が少なくありません。痛風に限らずコロナ禍での健康維持は、個人の心がけが大切です」

 この記事が痛風の予防を意識するきっかけとなれば幸いである。さらに痛風について詳しく知りたいという方は、舛森医師が運営するYouTubeチャンネル「YouTube医療大学」をご覧いただきたい。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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