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木村誠「20年代、大学新時代」

コスパの良さで医師を選択する受験生も…大学医学部は「地域枠」で変わるのか

文=木村誠/大学教育ジャーナリスト
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日本大学医学部・医学部附属板橋病院正門(「Wikipedia」より)

 日本大学の井ノ口忠男氏が理事を辞任した。今後、田中英寿理事長への疑惑が検察によって明らかになるようだと、アメリカンフットボール部の「悪質タックル事件」を何とか乗り越えた日大トップへの責任追及が本格化するであろう。1970年代の日大全共闘に対抗して、当時の大学当局の意を体したと言われる田中理事長の身の振り方が注目される。

 日大は、危機対策本部を設置して再発防止に努めると公表した。実は日大は危機管理学部を2016年に設置して、危機対策の専門家を育ててきたはずである。ただ、卒業生の就職先としては、当時から実績のあった警察官などを想定していたようだ。それにしても、井ノ口前理事がアメフト事件の被害者関係者に口封じ工作をした責任を取って理事を辞めたのに、数年たって復帰させるという人事は、自大学の危機管理という視点からも疑問がある。

 危機管理学部は、安倍晋三元首相の“モリカケサクラ”の加計学園系列の千葉科学大学が日本で初めて04年に設立、同系列の倉敷芸術科学大学が17年 に設立した。やはり就職先に警察官が目立つ。

 危機管理の基本は、我々庶民の感覚でいえば「君子危うきに近寄らず」(教養があり徳がある者は、自分の行動を慎むものだから、危険なところには近づかないという意味)である。

 今回の日大医学部附属板橋病院の建築にかかわる事件では、大阪の医療法人「錦秀会」の籔本雅巳前理事長が危うい一人だったようだ。医師で安倍元首相のゴルフ仲間であり、本来ならば社会的には警戒すべき人物ではないはずだが、そこは“闇”なのであろう。

 籔本氏は1960年生まれである。父親も医師で、関西医科大学から大阪大学医学部大学院を卒業した。当時から関西医大は、近畿圏では屈指の名門私立医大であった。彼は父の医療法人を継いでから、どんどん病院経営を拡大させてきたやり手という評判だ。今回の日大の事件の仕組みも、医療界に精通した彼のアイデアによるところが多かったのではないか、と疑われても不思議ではないだろう。

対照的な『ドクターX』と『ナイト・ドクター』

 この秋スタートしたテレビドラマ『ドクターX』(テレビ朝日系)は、資金力が重要な役割を持っている点で籔本氏の件を彷彿させる。ところが、この春に放送された人気ドラマ『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)では、まったく別の医療の世界を見せていた。

 慢性的な医師不足の夜間救急という状況下で、救急車に運ばれながら各病院から受診の受け入れを拒まれる医療難民、軽いけがでも気軽に受診するコンビニ受診などの実態が浮き彫りになる中で、健康保険料未払いで診療を拒む貧しき父と子、「死なせてくれ」と叫ぶホームレスの急病患者や、虐待されている近所の子どもを自分の子として受診させ罪に問われる女性――そこに『ドクターX』とはまったく違う医療界の現実がある。

 しかし、昨今の医学部受験生の中にはコストパフォーマンスで医師を選択する者も少なくない。『ドクターX』の世界を思い描いているのであろう。

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