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ウクライナ”歌姫”カーロリさんの67歳父が領土防衛隊に

文=Business Journal編集部
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岸田文雄首相と面会した歌手チーナ・カーロリさん(Instagram tina_karolより)

 今月来日し、ロシア軍に侵攻されている母国・ウクライナへの人道支援を求めた同国の国民的歌手チーナ・カーロリさん(37)の父グリゴリー・リーバーマン氏(67)が領土防衛隊に参加したことがわかった。仏紙フィガロのインタビュー『Tina Karol, chanteuse et figure de «The Voice» en Ukraine: «J’ai compris que j’avais une arme avec ma musique»』で明かし、ウクライナ国内で大きな反響を呼んでいるようだ。

 同国政府は領土防衛のため18~60歳の男性の出国を禁止しているが、カーロリさんの父は年齢的に対象外だった。インタビューで、カーロリさんは「国を離れることができるが、父はウクライナを守るためにとどまりたいと思った」と語り、「それを受け入れるのは簡単ではありませんでした」と述べた。

 カーロリさんは現在、世界中をめぐり同国への人道支援を求めるツアーを続けている。ウクライナに残る家族やかつての仕事仲間に対し、「彼らは私を待っています。もちろん、いつ訪問できるかはわかりません」と語る。そのうえで、「私は荒れ狂う戦争について話すために旅行します。なぜなら、これは私たちの国だけでなく、ヨーロッパ全体とその将来に関係していることを人々が理解しなければならないからです」と述べた。

 カーロリさんは三木谷浩史楽天グループ社長の招請で来日。今月14日千葉市内のイベントに出演。16日には日本外国特派員協会(東京都)で記者会見し、ウクライナの子守歌「夢は窓辺を過ぎて」を披露し、「私の武器は言葉、音楽です」と同国への支援を求め、17日には岸田文雄首相と会談していた。

出国を認める請願2万5000人の署名も

 男性の出国禁止はウクライナでは関心のあるテーマであり続けている。同国のニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」が22日公開した記事『Зеленський каже, що на Сході може гинути до 100 військових в день』(ゼレンスキー氏「1日に最大100人の兵士が東部で死ぬ可能性があると言います」)では、18~60歳までの男性の原則出国禁止方針に対する同国内での混乱が垣間見えた。

 記事では、男性の出国を求める請願書に2万5000人の署名がインターネット上で集まっていることを挙げる。この請願書に関し、同国のゼレンスキー大統領は現在の厳しい戦況を踏まえ以下のように述べたという。

「この請願書は誰に向けたものなのか。たぶん私に向けたものなのか。地元を守るために命を落とした息子を持つ親たちに、この請願書を示せるのか。署名者の多くは、生まれ故郷を守ろうとしていない。

 現在、1日50〜100人が東部(の激戦地)で困難に直面し、死ぬ可能性がある。(戒厳令下にある)彼らは私たちの国家と私たちの独立を守っている。(中略)自分がこのような請願書に対処するのにふさわしい人物と思わない」

 前述のウクライナ・プラウダには、戦時下の18~60歳までの男性がどのように動員されるのかに関する解説ページがある。動員は4つの段階で行われる。第1段階では、即時展開可能な予備役や元軍人、退役軍人、第2段階ではそのほかの予備役と、2014年まで軍隊に勤務したか契約に基づいて勤務した軍人、第3段階で大学の軍事学部を卒業した予備役と徴兵が行われ、第4段階で18歳から60歳のすべての市民(年齢、健康などの制限なし)が動員されるとしている。

 この段階別動員とは別に、自発的に防衛に参加する(ボランティア・義勇兵)ことも可能とされている。なお、政府から動員のため召喚されたが、来ない場合(上訴プロセスが進行中であっても)、「動員の回避」と解釈され、刑事責任(懲役3年から5年)が問われる可能性があるという。一方、「障がいや健康上の理由を持つ人」「障がい者の子どもや18才未満の子ども3人を養育している人」などに対しては配慮されているようだ。

 米紙記者は次のように語る。

「カーロリさんの父の領土防衛隊参加はウクライナ国内のSNS上で大きな反響を呼んでいます。一方、男性の出国禁止で、ウクライナ国外に避難した女性や子ども、高齢者と同伴できないことが、安全配慮面で懸念されています。また、自由主義諸国でいうところの『宗教上の理由などによる良心的徴兵忌避者』はどうなるのか。国家存亡の危機に立たされている国がどのような施策をとるのか、はっきりしないことは多いと思います。同国した避難した“国民”を守るためには、“現在のウクライナ”が存続することが求められるので、非常に難しい問題だと思います。

 21世紀にヨーロッパでこのような戦争の理不尽と不条理を見ることになるとは思いませんでした」

(文=Business Journal編集部)

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