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野村直之「AIなんか怖くない!」

ウクライナ戦争でAI殺人兵器「LAWS」は使われるのか?AIが変えた戦争

文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員
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ウクライナ大統領の公式サイトより
ウクライナ大統領の公式サイトより

 このたび、AI・DXコーナーの大半を占めていた拙連載「AIなんか怖くない!」が2年半あまりで最終回を迎えることになりました。名残惜しいような、ちょうど「戦争とAI」について重要な新動向を追い、考察を重ねていた途中なだけに、後ろ髪を引かれる思いもあります。しかし、少なくとも私が死ぬまで続くであろうAI応用談義、シンギュラリティ派との闘い(笑)については、また、どこかの媒体で連載を引き継ぎ、議論を続けてまいりたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、国際法的には純然たる被害者のウクライナが矢継ぎ早に採用したAI、その運用には倫理問題で物議を醸すものもありました。以前も取り上げた、兵士の顔認識の活用について、その後の議論を紹介します。特にいわゆる「ロシア兵の母親の会」会長がウクライナに感謝したエピソードです。

「戦争とAI」の最大の問題といえるのが、自律型致死兵器システム(LAWS: Lethal Autonomous Weapons Systems)の実戦投入です。ウクライナ=ロシア戦争でLAWSが使われるのか。関係者が固唾をのんで見守っています。最後に、最終回を迎えるにあたって、ビジネス現場をもっと快適にクリエイティブに支えるAI応用への期待を述べます。AIの今後の見通し方についていくつかポイントを記して終わりたいと思います。

兵士の顔認識について、その後

 4月の連載記事「ロシアを窮地に追い込んだウクライナ政府の驚嘆すべきIT・AI戦術…世界中を動かす」では、ウクライナ副首相デジタル大臣ミハイロ・フェドロフ氏の具体的な仕事ぶり、成果を記しました。2ページ目の後半、「顔認識AIによる兵士、戦争犯罪者の特定」では、クリアビューAI社の顔認識技術を導入して、個々の兵士の名前を特定し彼らの振る舞いを監視カメラ画像で紐づけ、戦争犯罪者とその証拠を特定しつつあることを記しました。これを、平時のようにプライバシー侵害、基本的人権の侵害だとする議論も巻き起こりましたが、その被害者たるはずの兵士の家族の意見はどうなっているでしょうか?

 戦時中の当事国の兵士への「人間の尊厳を侵されない扱い」を保証するジュネーブ条約違反であるという意見も散見されたなか、筆者自身は「ロシア兵士の母親の委員会の連合は、以前の反戦体制と停戦において重要な役割を果たしてきたと聞いています。戦争で亡くなったすべての若いロシア兵の名前を母親協会に伝えるのは良いことではありませんか?」と、機械翻訳によりロシア語やウクライナ語で投稿しています:

 米国兵士は、所属・階級・フルネームをプレスして刻んだ識別票「ミリタリー・ドッグ・タグ」を常時着けています。いつどこで死ぬかわからない兵士たちを、敵味方、第三者が同定できるように、常時Identityを公開するためのものです。身元を明らかにし、行方不明にならないようにし、情報がなく心配するばかりの家族らへの補償はもちろん、安否情報や遺体を送り届け、故人を鄭重に葬れるようにした。そのために、ミリタリー・ドッグ・タグを着けているわけですね。ロシア軍にはどうやらないように聞きましたが、そのために、兵士の家族は心配で、困っているようです。

「ロシア兵士の母親の会」会長ワレンチナ・メリニコワさんの発言が家族の心情、意見を集約、代表していると思われました。そこで、テレビ朝日の2022年4月3日の報道 “前線へ送られるロシア兵の現実−−「兵士の母の会」の告発”から引用します。彼女は、「ウクライナ政府による死傷ロシア兵の情報だけが頼りだ。感謝している。」と発言をしています。注目箇所を【】で示します:

<・・・いまは誰でもが前線に送られかねない状況だ。誰が志願兵で誰が徴集兵かなど、軍当局では誰も気にしていない。2008年のジョージア紛争の際にも南オセチアに徴集兵が送られた。憲法には良心的兵役拒否の項目があるのだが。

「母の会」にも手紙がたくさんきている。ある女性は、「自分たちにはチェルニヒウに親戚がいる。もし息子がウクライナに送られることになったら耐えられない」と書いてきた。以前はロシアにもジャーナリズムがあったから、情報発信の場があったが、いまは会の活動を広報する場もないため、兵士の母親や妻たちはどこに照会していいのかわからない。【捕虜になったか、戦死したのか、国防省に照会しても取り合ってくれない。】ようやく国際赤十字委員会がその作業を肩代わりし始めたところだ。

・・・中略・・・

 以前は「母の会」が捕虜になった息子たちを連れ戻したこともある。ロシア軍も協力的だった。しかし今は何もかもが違っている。この活動を30年やっていて、初めて恐怖を感じている。プーチン大統領が核の使用さえちらつかせて脅しをかけているからだ。

 今でもモスクワの軍幹部とはコンタクトがあるが、【わたしたちが持っているロシア軍の死傷兵リストは、ウクライナ側が提供してくれたものだけだ。IDナンバーやデータも正確だ。】IDバッヂもある。チェチェン紛争の時はIDバッヂがなかったため、兵士の遺体は誰かわからないままグローズヌイの街路で野ざらしになっていた。

 1月の演習時には兵員数はつかめていたが、今の兵員数はわからない。損害が大きくてロシアに戻った部隊も多いからだ。わたしたちはロシア軍中央医療局に、戦場に出た兵士たちの心理的なリハビリの実施を依頼しているところだ。

(ロシア軍の兵士の死者数は)正確にはわからない。【ウクライナ側から提供されたリストしかない。そこには名前もあるので信頼できる情報だと思う。】

 住民のための人道回廊が話題になっているが、死んだ兵士や捕虜を回収する、戦場の人道回廊、一時的な停戦が必要だ。遺体は戦場に残されたままになっている。不思議なことにロシア側がウクライナ軍の死者をどうしているのか、捕虜をどこに収容しているのか、まったく明らかになっていない。明らかにすべきだ。

・・・中略・・・

 ロシア政府は、戦死者の数を正式に発表して弔意をあらわしたことのない政府だ。戦死者も負傷兵も戦場に残されたまま、「行方不明」とされて終わりだ。

 わたしは、早急に死者の遺体、捕虜の交換をすべきだと思う。十字架を立ててやれないまま、名もなく朽ち果てていくことを見過ごすわけにはいかない。

・・・中略・・・

 最近もある母親が電話してきて「もうすぐ契約期間が終わるので、息子が帰ってくる」というのだが、息子がどこにいるのかもわからないままだ>

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