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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

中古住宅に数カ月後から価格下落の気配、今は様子見が重要?新築住宅は今後も価格上昇

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
中古住宅に数カ月後から価格下落の気配、今は様子見が重要?新築住宅は今後も価格上昇の画像1
「gettyimages」より

 首都圏を中心に住宅価格が上がり続けており、どこまで上がるのか疑心暗鬼が強まっている。業界関係者の間では、新築はまだ上がり続けるものの、中古についてはそろそろピークアウトするのではないかという観測が強まっているというのだ。どういうことなのだろうか――。

首都圏のマンション価格は高騰がやまない

 まず、現状の住宅市場の動向をみると、首都圏のマンション価格は図表1のようになっている。不動産経済研究所の調査によると、新築マンションの平均価格は、このところ5000万円台半ばから7000万円台前半の水準で推移し、2022年12月は5556万円で、前年同月比3.2%の上昇だった。発売月のうちに売れた割合を示す月間契約率は74.8%で、好不調の採算ラインといわれる70%を上回っている。首都圏新築マンションの月間契約率が70%を上回るのは2022年12月で5カ月連続。

 新築マンションは高値が続いているなかでも、順調に売れているわけだ。中古マンションについては、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の調査では、2022年12月の成約価格の平均は4276万円で、前年同月比3.1%の上昇だった。調査に当たっている東日本レインズによると、首都圏中古マンションの成約価格が前年同月比で上昇となるのはこれで32カ月連続になるそうだ。

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Microsoft Word – 首都圏発表資料2022年12月.docx (fudousankeizai.co.jp)

MW_202301data.pdf (reins.or.jp)

新築戸建はやや下落も一時的な現象にとどまるか

 マンション市場の高騰が続いているわけだが、戸建市場についても同じようなことがあてはまるのだろうか。やはり東日本レインズの調査によると、2023年1月の首都圏新築戸建住宅の成約価格の平均は4030万円で、前年同月比で2.9%の下落だった。新築戸建住宅価格は2010年10月に前年同月比1.6%の下落となって以来、2020年11月から2022年12月まで前年同月比の上昇が続いてきた。それが、久しぶりにダウンしたわけだが、下落幅は2.9%にとどまっており、比較対象となる2022年1月が前年同月比11.6%の大幅上昇だっただけに、今回の下落はその反動に過ぎないのではないかという見方が強い。

 現在、首都圏の新築戸建住宅は物件数が激減しており、かつてないほどに希少性が高まっているため、このまま本格的な下落に向かうことは考えられず、2023年2月以降再び上昇に転じるだろうという観測が強い。

 また、中古戸建住宅は、2023年1月の成約価格の平均が3827万円で、前年同月比9.4%の上昇だった。これで、中古戸建の成約価格の前年同月比は2020年11月から27カ月連続で前年同月比でのアップが続いているそうだ。

新築住宅の現状は上昇が下落を大きく上回る

 では、業界関係者はこの住宅市場の現状をどうみているのだろうか。全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)では、会員である不動産仲介会社からモニターを設定して、定期的に現在の取引価格と、3カ月後の見通しについて調査を実施している。その2023年1月実施の調査結果から、現状の価格動向に関する見方を住宅形態別に整理したのが図表2だ。

 調査は、「価格が大きく上昇している」「やや上昇している」「横ばいである」「やや下落している」「大きく下落している」の5段階から選択する方式だが、現状の価格については、いずれの住宅形態においても、上昇の合計が、下落の合計を上回っている。なかでも新築戸建住宅は上昇の合計が47.6%に達し、下落の合計が11.6%と、価格が上がり続けているという見方が多数派を占めており、新築マンションではさらに上昇の合計が47.7%で、下落の合計が6.0%と、上昇派が下落派を大きく上回っている。

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https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/01/DI-202301-3.pdf

新築住宅と中古住宅では現状の見方に温度差

 先にみたように、新築戸建住宅については、2023年1月に前年同月比が若干下落しているデータを紹介したが、下落は一部、一時的な傾向であり、全体としては上がり続けているとする見方が強いわけだ。中古住宅についても新築同様に、上昇とみるモニター企業のほうが、下落しているとするモニター企業の割合を上回っているものの、その差は新築住宅ほどではない。

 中古戸建については、上昇の合計が25.7%に対して、下落の合計は12.4%、中古マンションは上昇の合計が30.1%に対して、下落の合計が14.8%だった。上昇の合計から下落の合計を差し引いた数値をみると、中古戸建が13.3ポイントで、中古マンションが15.3ポイントになる。先にみた、新築戸建住宅は36.0ポイント、新築マンションは41.7ポイントだから、大きな差がある。同じように、現状は上昇しているとするモニター企業が多いものの、中古住宅については、新築住宅ほどには上昇していないのではないかと推測される。

新築と中古では3カ月後の見方に大きな差

 3カ月後の価格動向に対する見方では、その点がより明確になる。新築住宅については、まだまだ上がるとするモニター企業が多いものの、中古住宅ではむしろ下落するのではないかとするモニター企業のほうが多くなるのだ。不動産取引の仲介市場の第一線で活動している全宅連のモニター企業の見方だけに、先行きの動向に関して気になるデータといえよう。

 具体的にみると、図表3にあるように、新築戸建については、3カ月後も上昇しているとするモニター企業の合計が42.2%で、下落するだろうとみる合計が17.5%だった。3カ月後も新築戸建住宅価格が上がるだろうとする割合が、下がるだろうとする割合を24.7ポイント上回っている。現状の見方では、その差は36.0ポイントだったから、少し減少するものの、それでも新築戸建住宅の価格上昇が続く可能性が高いとみていいのではないだろうか。

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新築価格は3カ月後も上昇が続いている?

 新築マンションについても同様だ。やはり図表3にあるように、3カ月後も上昇しているとする割合の合計は38.7%で、下落するだろうとする割合の合計の13.4%を25.3ポイント上回っている。新築戸建住宅と同様に、3カ月後も価格の底堅い動きが続くだろう、まだまだ上がり続けるだろうとする見方が強い。

 マンションにしろ、戸建住宅にしろ、都心やその周辺の人気エリアでは、開発余地が極めて乏しくなっており、新築戸建住宅、新築マンションの供給が減少している。それが緩和されることはなく、むしろますます厳しくなるとする見方が強いだけに、新築住宅の希少性が高まり、価格は上がらざるを得ない。加えて建築資材、人件費の高騰圧力が強く、新築価格の右肩上がりの状態が続くことになるだろう。

3カ月先の中古住宅成約価格は下落?

 それに対して、中古住宅については弱気の見方が強まっている。中古戸建住宅については、3カ月後の価格が上昇しているとするモニター企業の合計割合が19.6%に対して、下がっているだろうとする割合の合計は23.5%。上昇から下落を差し引いた数値はマイナス3.9ポイントになる。また、中古マンションについても、上昇の合計が20.6%に対して、下落の合計が18.0%で、差し引きすると2.6ポイントと、かろうじてプラスを維持しているものの、現状の15.3ポイントのプラスに比べると大幅なダウンであり、かなり悲観的な見方が強くなっているといわざるを得ない。

 新築と中古の価格差からみて、中古住宅購入を考える層は、新築に比べて年収がやや低い傾向にあるが、年収の低い層は、年収の高い層に比べて最近の諸物価の高騰や住宅金利上昇の影響を受けやすい。この状況が続くと購入余力や意欲が低下する可能性が高く、やがて需要が減退、それが中古住宅の価格低下につながるのではないとする業界関係者が多いようだ。

新築と中古で買い時の見極め方が異なってくる

 実際にそうなるとすれば、中古住宅の購入を考えている人は、少し様子を見極めたほうがいいのかもしれない。その一方、新築住宅についてはまだまだ上昇する可能性が高いので、買うのであれば早めに行動したほうが良さそうだ。購入を希望する住宅の種別によって、市場動向を見極めていくことが大切になりそうだ。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2021~22


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