垣田達哉「もうダマされない」

すでに破綻した消費税軽減税率…メロンパンとサンドイッチで税率違う?


 では、店内で調理(製造・加工)したものをだけを外食にするとどうなるか。たとえば、ベーカリーでパンをつくる場所とパンを販売する場所が異なれば、販売するときには外食に該当しないことになる。離れた場所なら納得できるが、製造場所と販売場所が隣同士だったらどうなるのか。距離が何メートル離れていれば外食の適用外になるのかということも決めなければならない。

 そうなると、デパ地下惣菜やスーパーの弁当惣菜もやっかいになる。食品表示基準では、同じ敷地内で製造された食品は店内加工品に該当する。敷地外でつくられたものは店外加工品になる。この店内加工品と店外加工品では、表示基準を区別している。

 飲食店舗内で製造・加工したものを外食扱いにすると、デパートやスーパーの弁当惣菜も外食扱いになるものが出てくる。誰がどこでつくったかで外食扱いにするかしないかという線引きも、非常に難しい問題を抱えている。

線引きできずに増税先送りか

 今まで見てきたように、外食と加工食品を線引きすることには非常に無理がある。どんなかたちになろうと不満は出てくるが、あまりにも法律上の根拠が薄いと、消費者と事業者を納得させることは難しい。

 線引きを確定しなければ、事業者は準備することができない。線引きすれば、得する事業者と損をする事業者が出てくる。損をした事業者からの不満は強くなる。そこに、新聞や雑誌を軽減税率の対象に含めるとなると、他の業者業態からも「軽減税率の対象にしろという陳情合戦が起きる」だろう。

 そもそも、1年3カ月で事業者の税務会計を変更させることには無理がある。「時間切れで増税延期」の可能性が一番高くなってきた。

 では、法律的根拠に基づいた線引きはできないかというと、食品表示基準に準拠するようなかたちであれば、少々強引だができないことはない。それでも、皆が納得できる方法ではないが、次回は、出前と宅配の線引きの難しさや食品表示基準に基づいた線引き案をご紹介しよう。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

※拙著『一冊でわかる食品表示』(商業界)は、食品表示基準が定められている食品表示法の解説書です。軽減税率に関しては触れていませんが、食品関連事業者の方々には参考になると思います。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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