異なる部屋の力士同士の飲み会は問題だ
事件を普通の会社での出来事と置き換えてみる。平取締役(貴乃花親方)の子(貴ノ岩)が他の部の部長(日馬富士)に暴行されて入院に至った。入院する前に十数針縫う重症だったので、平取締役はあまりのことだと警察に被害届を出した。事前に社長(八角相撲協会理事長)に報告しなかったと非難されたが、社長は知ったなら、「双方の話を聞こう」「独自調査をしよう」「何より警察沙汰にはしたくない」と動くのではないか。社長の覚えが悪くなるかもしれないが、うやむやにだけはしたくない――。そういうことだったのだ。
そして捜査は司直の手に委ねられたのだから、内部調査は非公式なことになる。警察の調査結果を待つのが正しい。詳細が警察によって明らかにされる前に、つまり立件される前に、加害者の日馬富士は引退させてしまうべきだ。会社なら、わかっている事実だけで懲戒解雇とすべき事案である。引退させることで、横綱の逮捕という不祥事(これこそが相撲道にとってあるまじき不祥事となる)を避けられる。相撲協会の早急な英断が望まれる。
事件はモンゴル力士会が巡業先で開いた親睦会で起こったという。白鵬が貴ノ岩の生活態度について注意しているときに、貴ノ岩のスマホが鳴り操作したので日馬富士が激昂したというのである。貴ノ岩は平素はこの集まりからは距離を置いていたという。
相撲という格闘競技で、そもそもこんな集まりがあるのがおかしい。確かに日本という異国に来てがんばっている同士が交流し合いたいのはわかる。しかし、大相撲は部屋別総当たり制で、基本的に他の部屋の力士とは敵同士だ。
それが和気藹々と呉越同舟してしまったら、それこそ八百長の温床といわれかねない。事件を起こしたときに白鵬と日馬富士が発揮して醸成しようとしたのは、貴ノ岩に対する上位関係である。そんな人間関係が強まれば、勝負の世界で影響しないことはないだろう。特定の人間関係を断ち切った上で純粋に強弱を競い合うことを目指しているのが貴乃花親方であり、その指導を受けてモンゴル人力士会から距離を置いてきた貴ノ岩が正しい。
繰り返しになるが、貴乃花親方の選択を相撲協会内の派閥争いや次期理事長選と結びつけて貶めようとしている論調は間違っている。単純に告発されるべきは日馬富士と、いたずらに彼の処分を行わないでいる相撲協会のほうである。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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