ディーゼル車への逆風が強まり、EVシフトが鮮明になる昨今、DPF需要の激減は明らかであり、DPFメーカーは減産に迫られるのは明らかだ。背に腹は替えらず、住友化学のように早期の撤退を決意するメーカーが現れてもおかしくない。
そうしたなか、DPFメーカーに朗報がある。今後はガソリン車にもDPFが必要になるのだ。ただし、正確にはDPFではなくGPF(ガソリン・パーティキュレート・フィルター)である。
金融機関は果たして融資するか
今後、燃費規制、二酸化炭素(CO2)排出量規制はさらに強まる。EUではCO2排出量を1キロメートル走行当たり66グラム以下にすべしという非常に厳しい規制が2030年以降に実施される可能性がある。これを日本流の燃費に換算すると、およそリッター35キロメートルである。
こうした超燃費のガソリン・エンジンにするには、ディーゼル・エンジン並みに薄い混合気で燃やさなければならなくなる。超超希薄燃焼だ。これによってガソリンに火が点きづらくなり、燃え残り(PM)が多く出る。これを除去するにはGPFが必要になる。
最近、欧州の自動車メーカーばかりか国産メーカーも燃費向上を狙って採用するようになった直噴ターボエンジンは、PM2.5の排出量が多く、GPFが必要になる可能性が高い。DPFメーカーはGPFの生産もすることになり、かつガソリン車はディーゼル車よりもずっと多いので、生産量は倍加する。では、生産設備の拡大は可能だろうか。危惧すべきは、金融機関からの融資だ。
そうこうしている間に、主要国ではガソリン車も含めた内燃機関自動車の販売が禁止される。ノルウェーでは2025年から、スウェーデン、インドでは30年から、イギリス、フランスは40年からだ。DPFもGPFも不要になる。その生産システムも不要になる。金融機関からの融資は難しい。
エンジン車存続のキャスティング・ボートは部品メーカーが握る
エンジン車の存続のキャスティング・ボートは、産業の頂点に君臨する自動車メーカーが握っているわけではない。高度な技術を持つ部品メーカーの離脱こそが、エンジン車生産の息の根を止める。
遠くない将来にエンジン車の販売が禁止される。しかし、住友化学のようにエンジンの重要な部品の生産から撤退が相次ぐと、禁止される前にエンジン車の生産は実質的に不可能になる。それとも自動車メーカーは多くの部品メーカーにM&A(合併・買収)をかけて巨大化し、エンジン車の生産を続けるのだろうか。
(文=舘内端/自動車評論家)