ハウス食品がココイチ以外を排除?
壱番屋の業績は堅調だ。直近本決算の18年2月期の売上高は前年同期比10.2%増の494億円(前の期の17年2月期が9カ月の変則決算のため、前年同期間との比較)だった。国内が引き続き好調だったほか、中国と台湾でココイチを運営するハウス食品グループの事業会社2社を子会社化したことが大きく影響し、大幅な増収となった。なお、近年は海外展開にも力を入れており、アジアを中心に8月末時点で163店を展開している。
ココイチでは、家庭の素朴な味のカレーを提供しており、飽きがこないのが特徴だ。万人受けする味なので、幅広い層を取り込むことができる。飽きがこないよう、トッピングが充実しているほか、カレーソースの辛さやライスとソースの量を調節できるのが特徴となっている。これらは客単価を高める効果もあり、たとえば、定番商品の「ポークカレー」は税込み484円(地域によって異なる)と低価格だが、多くの人がトッピングなど調節を加え、合計で1000円近くになることも珍しくないという。
ココイチが今もなお元気なのは、強力なライバルがいないことも大きいだろう。国内2位とみられる「ゴーゴーカレー」の店舗数は現在約70店で、ココイチの5%程度にすぎない。1位と2位でこれだけ開きがある飲食業態は、ほかに見当たらない。このようにココイチには強力なライバルがいないため、1000店を超えた今でも成長が止まらず、店舗数と既存店売上高を伸ばすことができているといえそうだ。
ココイチに強力なライバルがいないのは、ハウス食品の存在が大きい。チェーン展開でカレーを販売するとなると、大量のカレーソースが必要で、それには原材料となる大量のカレールーや香辛料などが必要になるが、香辛料は海外産がほとんどで、安定的に調達できる企業となると、ハウス食品などごく一部に限られてくる。ココイチはハウス食品からカレーの原材料を安定的に調達できたので、巨大な店舗網を築くことができた側面があるのだ。
うがった見方をすれば、ハウス食品がココイチ以外のカレー店を市場から締め出していると考えることもできる。ハウス食品はルーの供給において強大な力を持っているので、ココイチにはルーの供給などで優遇し、ほかのカレー店には割高に供給するなどして競争力を抑え込むことも可能だろう。ハウス食品にしてみたら、大きなチェーンに一括して供給していったほうが効率は良い。そのため、ハウス食品がココイチ一強になるように市場を導いてきた側面があるのではないか。