夏休みということで、各地の行楽地が賑わうシーズン。
関東近郊で多くの人が詰めかける場所といえば、やはり「東京ディズニーランド」「ディズニーシー」である。
アトラクションやイベントはもちろん、東京ディズニーリゾートといえば、どんな時でも笑顔を絶やさずお客をもてなすキャストのホスピタリティが話題になることが少なくない。彼らがいるからこそお客は現実をつかのま忘れ「夢の国」に浸ることができる。
ただ、「夢の国の住人」とはいえキャストたちもやはり人間。嫌な仕事や嫌なお客、仕事への不満や愚痴もあると考えるのが自然だろう。
ディズニーの「美談」に元キャストは…
『ディズニーキャストざわざわ日記――“夢の国”にも××××ご指示のとおり掃除します』(笠原一郎著、三五館シンシャ刊)は元キャストの著者によるディズニーキャストのありのままの姿に迫る。
ディズニーキャストのホスピタリティについては、ビジネス書などでこれまで何度も取り上げられてきた。
「すべてのスタッフにミッションが刻み込まれている」
「すべてのキャストがすべての職種に関心を持ち、ゲストのハピネスのために互いに協力し合っている」
「『仲間を大事にする思い、仲間への気遣い、思いやり』がディズニーのすべてのキャストの胸に刻まれ、手抜きをしない大きな力となっている」
といった具合である。
これに対して著者の笠原一郎氏は「おいおい、ホントかよ!?」とツッコミを入れている。
われわれも人間だから、手を抜くこともあれば、ミッションを忘れるほどゲストに対して怒りを覚えることもある。仲間と会社の愚痴も言い合うし、給料が安いと不満を持ったりもする。(P2より)
非正規雇用に依存するディズニーの雇用構造
よく知られているように、ディズニーキャストの給料は安い。
それはキャストの大半が正社員とは待遇面が異なる「準社員」だという点が大きいようだ。「社員」と名がついているものの、準社員は時給制であり、実態はアルバイトやパートに近い。運営元のオリエンタルランドの正社員は約5400人。これに対して準社員は約1万5800人もいる(2021年3月時点)。彼らに依存することで、利益を出しやすい雇用構造になっている。
肝心の時給はどうかというと、能力に応じたグレード分けがされていて、本書によると最上位が1350円、最下位は960円。自宅から通える人はともかく、一人暮らしだとなかなか収入的には厳しいかもしれない。また、冬場の閑散期には勤務時間が大幅に減るため、「お金を稼ごうとする人にはまったく向かないアルバイト」なのだとか。
給料以外のモチベーションになりうるのが「ディズニー愛」なのだが、ここもキャストによって濃淡があるようで、「大好き」な人もいれば、仕事と割り切っている人もいて、様々なようだ。
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本書で明かされるパーク内のエピソードはすべて実話。
お客さんとの忘れられない思い出や、できればやりたくない仕事。好きだったお客さんや嫌だったお客さん。園内では一様に笑顔でも同僚としてつきあうとひと癖もふた癖もあるキャストなど。お客さんとして遊びに行くだけではわからないディズニーの裏側を知ることができる、読み応えのある一冊だ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。