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「電話が繋がらない」を撲滅…AIで“顧客の不満”を先読みし、企業収益に変えるCX革命

2025.06.09 2025.06.08 12:41 企業
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RightTouch代表取締役の野村修平氏と長崎大都氏

●この記事のポイント
・株式会社RightTouchはシリーズAラウンドで総額8億円超の資金調達を実施し、累計調達額は14.2億円となった
・同社はカスタマーサポート領域に特化したSaaS事業を展開しており、同社のサービスを導入した企業は、単なる業務効率化にとどまらず「コスト削減と顧客体験の向上を両立できる」などの成果が出ているという

 株式会社RightTouch(東京都港区、代表取締役 野村修平/長崎大都)は、グローバル・ブレイン株式会社(東京都渋谷区、代表取締役社長 百合本 安彦)とGMOインターネットグループのGMO VenturePartners株式会社(代表取締役:杉山 一康)を対象とした第三者割当増資に加え、商工組合中央金庫からの借入によりシリーズAラウンドで総額8億円超の資金調達を実施し、累計調達額は14.2億円となったと発表した。

 RightTouchは、カスタマーサポート領域に特化したエンタープライズ企業向けSaaS事業を展開している。複数のプロダクトを展開し、VoC(Voice of Customer:顧客の声)や顧客行動、企業ナレッジなどのカスタマーサポートにまつわるデータを統合・連携し、これまで分断されていた各顧客接点やワークフローをつなぐことで、カスタマーサポートのより深い課題解決、価値創出を行うコンパウンド型の戦略を取っている。

目次

 RightTouchは、サポートデータと生成AIの活用でカスタマーサポート産業全体に革新をもたらすスタートアップとして注目を集めている。もともとマーケティング領域を中心としたSaaSプロダクト「KARTE」を手掛ける株式会社プレイドからカーブアウトする形で設立された。

「RightTouchの事業着眼点は、顧客との最初の接点、すなわち問い合わせが発生する前の段階に着目していることが特徴的です。従来のカスタマーサポートは、問い合わせが来てからいかに効率的に対応するかに焦点が当てられていましたが、当社では顧客が問い合わせに至る前、Webサイト上の行動データを元に顧客の困りごとを特定し先回りして解決することで、CX(顧客体験)向上と問い合わせ削減を両立することを可能にしています。

 弊社のソリューションは、SBI証券やJCB、Panasonicなどの各業界をリードする大手企業にも導入されており、その効果は実証済み。Web上で顧客の課題を的確に捉え、プロアクティブな情報提供を行うことで、自己解決率の向上、オペレーターの負担軽減、そして顧客満足度の向上に貢献しています」(長崎氏)

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 近年、RightTouchは生成AIを軸にした各プロダクト・基盤の強化を進めており、SaaS企業でありながら、AI技術を駆使した高度な顧客対応ソリューションを提供している。VoC(Voice of Customer)や企業ナレッジをはじめとした大量の非構造化データがカスタマーサポート領域には存在しており、労働集約性が高い職種特徴も相まって生成AIとの相性が非常に良い。例えば、昨年発表した「RightVoC by KARTE(β版)」では大量のVoCをAIが解析し、問い合わせ内容の分類、要約、課題分析を自動で行い、カスタマーサポート部門やオペレーターの業務効率化はもちろん、発見した課題やニーズを顧客接点でも活用していくことで、さらなる顧客体験の向上が図れる。

 RightTouchは、顧客との関係性を重視し、カスタマーサポートの単なる効率化だけでなく、カスタマーサポート自体の役割を変革し、企業の成長と顧客満足度の最大化を支援するパートナーとして、その存在感を増している。

RightTouchが描くカスタマーサポートの未来

●カスタマーサポートの体験や企業内における業務フロー全体を最適化するため4つのプロダクトと生成AI機能群

 RightTouchが提供するプロダクトは現状で大きく4つある。Web行動データを元にプロアクティブなWebサポートで問い合わせ前の自己解決を促進する「RightSupport by KARTE」、Webと電話のデータ・体験を連携してコンタクトセンター業務の最適化を図る「RightConnect by KARTE」に加えて、新たに音声領域×AIで適切な自己解決促進、オペレーター応対の大幅削減を可能にするチャネル最適化ボイスボット「RightVoicebot by KARTE(β版)」や前述の「RightVoC by KARTE(β版)」を昨年末にリリースした。

 これらのプロダクトは、顧客の自己解決率を高めるだけでなく、オペレーターの負担軽減や顧客満足度の向上にも貢献している。

「RightSupport by KARTEを導入しているJCB社は、顧客の問い合わせ内容を詳細に把握し、ウェブサイトの改善やFAQコンテンツの最適化を行うことで、顧客の自己解決率が大幅に向上しまました 。また、これまで月に数件しか実施できなかったサイト改善のアクションを、月に数十件へと増加させることに成功し、カスタマーサポート部門主導での顧客体験の継続的な向上を実現しています」

 導入企業からは、「コスト削減と顧客体験の向上を両立できる」「オペレーターの負担が軽減され、離職率が低下した」「顧客からの問い合わせが減り、本来注力すべき業務に時間を使えるようになった」などの声が寄せられているという。

AIエージェントとしての進化

 また、RightTouchはAI技術の進化を積極的に取り入れ、AIエージェントとしての側面を強化している。

「私達が提供するRight Intelligenceは、カスタマーサポートの各種顧客接点で柔軟に活用できる生成AIを搭載した機能群です。『スマートエージェント(β版)』『ライブアシスト』『RightVoicebot by KARTE(β版)』の3つの機能モジュールを通じて、顧客の困りごとを正確に理解し、最適なFAQや問い合わせ窓口へと誘導いたします。ハルシネーション防止の設計により、Web接点から電話対応まで一貫した顧客体験を提供し、CXと業務生産性の両立を実現しています」 

 このように、同社ではAI技術を活用することで、さらなる顧客体験の向上と企業の成長に貢献することを目指している。

成長戦略と投資家の期待

 RightTouchは、カスタマーサポート領域におけるAIエージェントとしての成長に、投資家からも大きな期待が寄せられている。

 外部からの資金調達も積極的に行い、プロダクト開発や事業拡大に投資することで、さらなる成長を目指す。RightTouchは、SaaSとAIの融合により、カスタマーサポートの未来を創造する企業として、その動向から目が離せない。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)