デフレギャップ解消に必要な財政規模は最低4兆円
日本経済に求められる経済政策を考える上で、ひとつ目安となるのは足下の需要過不足の規模である。内閣府が計測した昨年のGDPギャップは+0.4%となっているため、すでに日本経済は完全雇用の状況にあり、需要刺激策は不必要ということになる。
しかし、国際比較が可能なIMFのエコノミックアウトルックに基づいた場合、今年の日本のGDPギャップの見通しを見ると、世界経済の拡大が織り込まれているため、昨年よりGDPギャップは縮小するも、依然として4.0兆円程度の需要不足が存在することになる。となると、次の消費増税も織り込んだかたちで日本経済を考えると、デフレ脱却は少なくとも2019年度いっぱいまでは厳しいことになる。消費増税という選択肢は、デフレ脱却と財政再建のどちらを重視するかによって重要な決断になってくるのかと思われる。
また、これまでのマネタリーベースの増加ペースの変遷を見れば、日銀が国債購入量を減らしても金利水準は維持できている。さらにはイールドカーブ・コントロール下の財政政策は、長期金利の抑制を通じてより需要刺激効果が出る可能性が高く、マネタリーベースの増加ペース拡大に伴う円安も期待できるため、そういった意味では、景気対策の財源は国債発行が望ましいと考えられる。
なお、補正予算の規模としては、消費増税を実際に行うのであれば、駆け込み需要が出てくるため、消費増税の前に規模はそこまで大きくしなくても良いとする向きもある。しかし、その場合は、消費増税後には、それなりの規模の財政政策を組み合わせなければならなくなるだろう。
ただし、足下の状況で景気対策を十分に行わなければ、経済成長は厳しいと予想される。そもそも消費税率を上げる決断をするハードルが相当高くなるような経済状況になる可能性もある。このため、消費税率を上げるにしても上げないにしても、景気対策が必要だと思われる。
国債格付けは経済成長も重視
ちなみに、財政は大丈夫なのか? という意見もあるが、財政の関連指標はアベノミクス後、軒並み予想以上の改善を示しているというところからすると、早期の財政危機のリスクはほとんど考えられない。懸念されるのは、格付機関による国債の格下げである。2015年の9月にスタンダード・アンド・プアーズが格下げしたが、きっかけはその前に公表された15年4-6月期のGDP成長率がマイナスになったことであり、アベノミクスに伴う経済成長が期待できなくなったことが理由とされている。