しかし、18年4月13日には、名目経済成長率が2%を超え、実質実効金利がマイナスであることで、政府債務残高が従来の予想よりも早く安定化するとの見方を反映して、日本国債の格付けアウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に変更した。こうした事例を踏まえると、財政再建を考えるうえでも経済成長重視の政策を進めていくべきと考えられる。
重要な労働市場改革
一方、短期的な需要サイドの政策だけではなくサプライサイドの政策も重要である。日本の人口動態を考えると、特に2020年代後半以降は人口減少が加速し、労働参加率をさらに引き上げなければ、経済成長率も非常に厳しくなる。
実際に足下で、本当は働きたいが何がしかの理由で求職活動をしていないいわゆる就業希望の非労働力人口が360万人以上存在しており、これを考えると、出産、育児や介護等の対応が喫緊の課題になっている。
このように、労働参加率をさらに引き上げ、労働投入量を増加させるには女性と高齢者の活躍が鍵となるが、個人的には外国人も重要と考えられる。そういう意味では、女性、高齢者、外国人の就業を阻害している最大の要因が日本特有の雇用慣行であり、同じ会社に長く勤めれば勤めるほど、恩恵を受けやすい就業構造を変えていくことが必要である。
象徴は、正社員の賃金構造が年功序列となっていることであり、これを打破すべく一刻も早く踏み込みが必要な政策が、正社員の解雇ルールの明確化やホワイトカラー・エグゼンプションのような労働市場の流動化を促し労働生産性を上げる政策である。実際にOECD諸国で、労働市場の流動化と経済成長の関係を見ても明確な関係があり、背景には成長分野に労働力が迅速に配分されること等により、家計の収入も増えやすいことが推察される。ここは成長戦略のなかでももっとも踏み込みが期待される部分である。
また、外国人の活躍については、全国各地の大学が外国人留学生を増やすことで地方創生にも結びつくと考えられる。諸外国との比較で見ても、日本が受け入れる外国人留学生の比率は低い。日本では留学生30万人計画という目標があるが、日本のインバウンドの消費だけで去年3.4兆円程度あることからすれば、我が国もオーストラリア等の政策を見習って、もっと外国人留学生の増加に力を入れるべきなのではないかと考えられる。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)