肝心な料理の味だが、ステーキはテーブルに到着した時点で冷めており、美味しく食べられる状態ではなかった。また、3000円近くするウニを使った冷製パスタは、口に入れた瞬間に違和感を覚えるほど味全体がアンバランスで、パスタとソース、具がケンカしているよう。さらに量はわずか4口分くらいで、「この値段でこの味はヒドイ」というのが2人の共通した感想だった。
ちなみにこの日の会計は、滞在時間1時間、料理4品とドリンク5杯で総額約1万2000円だった。
みんなが利用している店=人気店?
では、なぜ料理、接客、居心地などのクオリティーが低くコストパフォーマンスも悪いにもかかわらず、人気が高い店というのが多いのだろうか。
『ぜったい行ってはいけない有名店、行かなきゃいけない無名店(東京編)』(アイビーシーパブリッシング刊)など、数多くの飲食店レビュー本を著書に持つJ.C.オカザワ氏は、飲食業界のこうした現況のカラクリについて次のように語る。
「“たいして美味しくない店”や“接客レベルが低い店”が人気店になっているケースは最近増えていて、特に飲食店レビューサイト『食べログ』の影響力が浸透しきった5年ほど前から、その傾向に拍車がかかっています。そういった人気に実力が伴っていない店は、女性客をターゲットにしたコンセプトのお店が多いです。日本人女性特有の心理ですが、ファッションでもみんな似たようなコーディネートをよくしているし、みんな同じようなブランド物のバッグを持っていたりしますよね。これは自身の個性を確立している欧米の女性にはあまりない傾向で、日本人女性は“みんながイイというものはイイ”という価値観の方が多いといわれています」
例えば「店内が会話できないほどガヤガヤして騒がしい」というデメリットが、そういった価値観の女性からすると「みんなが利用している人気店という証拠」というメリットに置き換えられているということであろうか。
「そういうこともあるでしょう。飲食店を選ぶ際にポイントとなる部分は人それぞれ違いますが、大別すると『料理の質』『価格』『雰囲気』の3つ。雰囲気というのは外観、内観、BGM、そして客層などを指します。一概に男女の違いと言い切れるわけではないですが、多くの男性が気にするのが料理の質と価格なのに対し、多くの女性は雰囲気と価格を気にするのです。男性同士で食事をするとなったら、小汚くても確かな味を提供してくれる料理店を選ぶことが多いと思いますが、女性同士の場合は味よりも雰囲気を重視することが多いということです」(同)