高齢者の方の「整理収納」問題…“思い出のモノ”を捨てずにすむための方法
高齢者の方との「整理収納」
整理収納アドバイザーの資格を取得したものの、幅広い整理収納の分野のなかでどんな仕事をしていきたいか考えた時、もう少し現状を調査したいと考え、会社員を続けながら大学の修士課程で研究することにしました。その時の研究テーマが「高齢期における整理収納」でした。
ご高齢者の方が住み替えを経験されて、何を大切にされているのか、何を残されて、従来の荷物はどうされたのかなどを研究しました。研究のなかでは、高齢者施設に住み替えた方のインタビュー調査も行いました。整理収納をテーマに住み替えの経験などについてヒアリングさせていただくのですが、いつのまにか思い出話になっているのです。そしてたっぷり時間をかけてお話をお伺いしましたが、それは私にとってとても大切な時間となりました。
お部屋にお伺いして、部屋のサイズなどもさまざまですが、施設に持ち込まれている物も皆さま異なります。ただ、部屋の中に「思い出の品」が飾ってある方は、その思い出のストーリーをすべてお話ししてくださるのです。いつ頃、誰と、どんな状況や背景があって……など、話をお聞きしているだけで、こちらが嬉しくなりました。そして、それほどまでに愛着や思い出のあるモノに囲まれて過ごせる環境は、とても大切だと感じました。
思い出の品は整理していくなかで手放すことが難しいモノの一つです。すべてを残すことは難しいかもしれませんが、やはりそのなかでも整理をきちんと行い、大切にしたいと思っているモノは大切にするべきなのです。整理しているなかで間違って処分してしまったり、面倒になって一斉に処分してしまったりすることもあると思います。家という限られた空間のなかで豊かに暮らすエッセンスとしてモノがあり、限られたなかでどんなモノを優先して残し、暮しの一部としていくのかということです。
他人から見たら「なぜこれが大切なのかわからない」と思うモノも、その方にとっては「宝モノ」です。私が整理収納作業にお伺いする際にとても大事にしているのは、その「宝モノ」を見落とさないようにすることです。それは、整理収納の基本的なノウハウよりも大切なことで、お客様との会話や、お客様の表情をみることがとても大切です。その一つひとつを見逃さないように一緒に作業を進めることで、お客様のご意向を少しでも感じ取り、作業を進めていくことが一番大切なことだと感じています。
(文=小林朗子/整理収納コンサルタント)