認知症を予防するには、サラダ油を排除すること
現時点では認知症を治療することはできないという説が強いですが、増加することだけは世界的に確実視されている厄介な病気です。1人が認知症になれば、家族介護が原則ですので常時1人の介護者が必要になり、誰かが時間的、経済的な負担を負うことになります。また、医療費の増加は家計だけでなく国の財政を圧迫し、社会保障費の破綻もこのままでは時間の問題です。
最近では高齢者だけでなく、若年性認知症も増え社会問題になっています。先日も、若年性認知症を発症した50代後半の母親を30代の一人娘が介護するドキュメンタリー番組を見ました。介護する時間を確保するために正社員だった会社を辞めてパートに切り替えて母親の面倒を見ているのですが、収入減から生活は苦しく、懸命に介護するものの彼女の夢や将来を犠牲にしていることも伝わって、見ていて胸が痛くなりました。私も一人娘がおり、決して他人事ではありません。
山嶋氏は、こうした実情を「認知症は亡国の病」と呼び、早急な対策を訴えています。
私たちができる認知症予防は、ヒドロキシノネナールを摂らないことです。そのためには、加熱処理されたサラダ油を摂らない食生活にしなければなりません。まず、家庭からサラダ油をなくし、外食で油料理を食べず、原材料欄に「植物油」や「食用油脂」と書かれたスナック菓子なども避け、マヨネーズやドレッシングは安全なえごま油やアマニ油を使って自分でつくるのです。最近は油を使わずに調理できるフライパンやフライヤーなどもあり、植物油の正しい知識を身につければ、脱サラダ油もそう難しいことではありません。
認知症の発症には20~30年の潜伏期間があるといわれています。もちろん、すべての人が発症するわけではありませんが、リスクを避けるのは誰にとっても有意義です。気づいた時点から食生活を改めるべきです。
山嶋氏の研究成果の数々は英論文として世界に向けて発表され、注目を浴びています。しかし、新聞やテレビなどマスコミが取り上げることはありません。食用油メーカーが大スポンサーだからでしょう。これも認知症が増え続ける大きな原因です。
マスコミが報じないので、ヒドロキシノネナールは一般市民にとって馴染みのない言葉かもしれませんが、山嶋氏の著書は次々に発行されて多くの人に読まれているので、いずれ誰もが知る認知症予防のキーワードになる日が必ずやってきます。誰も認知症のリスクから逃れられないからです。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)