国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が8月に特別報告書を公表しました。この中では、温暖化の進行により食料供給のリスクが高まること、2050年に穀物価格が最大2割以上上昇する恐れがあること、食料生産にかかわって放出される温暖化ガスは全放出量の最大4割弱を占めること、などが指摘され、食品ロスの削減が温暖化対策に有効であることが示されました。
読者のみなさんも、日本国内で相次ぐ豪雨災害や日本近海での台風の出現など「最近、ちょっと異変が起きているのでは?」と感じていることと思います。日本の豪雨や欧米を襲う熱波などの極端な気象現象は、温暖化が原因である可能性が高く、そのような気象の異常は食料の安全保障や陸地の生態系に悪影響を及ぼします。
人口の急増が止まらない地球において、食料供給システムの能力向上は解決すべき喫緊の課題ですが、これが一方で地球の温暖化を加速する結果になることは、温暖化問題に取り組む科学者の間でもあまり認識されていなかった事実です。食料生産に伴う温暖化ガスについては削減には限界がありますが、今問題となっているのは食品ロスの影響です。
世界で生産された食料の3割弱が廃棄されていると見積もられており、廃棄される食料の生産・流通・廃棄処分に伴う温暖化ガスの放出量は全放出量の1割弱を示すことが、同報告書の中で明らかにされました。
温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定では、産業革命前からの気温上昇を可能な限り1.5度以内に抑える目標を掲げています。これを実現するためには、これまで注目されていた火力発電や交通機関の問題だけでなく、農業・畜産業の生産性向上ならびに食料廃棄量の削減にも取り組まなければ困難だと考えられます。
一方で、地球上の光合成反応の2割を担うアマゾンでの森林火災の大規模化が止まりません。大気中の二酸化炭素を除去する先端技術はいろいろ研究が進んでいますが、もっとも簡単で現実的な方法は森林を増やすことです。一方で、合法的な森林伐採による農地開拓は、前述の通りの人口急増を受けて、貧困国においてはやむを得ない必要悪だと考えることもできます。
海藻を食べて二酸化炭素抑制に貢献?
そこで注目されているのが、二酸化炭素を吸収し、食べてもおいしい海藻です。近年、地球温暖化の観点から海藻の役割に注目した論文が出始めており、気候変動対策として海藻、特に昆布のような大型の海藻の役目がクローズアップされています。
昆布などからなる海のジャングルは陸上の森林に比べて成長が早く、二酸化炭素の吸収率が高いことが特徴です。同時に、大気中の二酸化炭素が海水に吸収されて起きる海洋の酸性化を防ぐこともでき、地球温暖化の抑制と生物多様性の保護を両立し、しかも食料やバイオ燃料として役立つ万能選手として有用であることを、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者らが発表しました。
この発表では日本近海における見積もりは行われていませんが、米国においてはカリフォルニア州沖の米国海域の4%で海藻を栽培すれば、カリフォルニア州の農業による二酸化炭素排出を相殺できるとしています。
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