腸内細菌は食物の嗜好にも大きな影響を与えますが、2010年に生の海藻を消化できるのは日本人だけであることがフランスの研究者によって明らかにされ、私たち日本人自身がもっとも驚かされました。外国人も、加熱調理によって海藻の細胞壁を破壊すれば栄養として摂取することができます。
生の海藻を消化することのできる日本人は海藻が大好きで、海藻サラダ、酢の物や汁物の具材、ラーメンのトッピングなど、あらゆる料理に生の海藻を使用します。海藻は日本の伝統的な食材で、アルギン酸などの食物繊維とカリウムを豊富に含むため、血糖値を下げ、糖尿病の予防や改善の効果があります。
「食べると長生きする」と古くから日本で伝えられている海藻の一種、ひじきは乾燥100グラム当たり1グラムものカルシウムを含んでおり、骨粗しょう症の予防に効果があると考えられています。なお、この言い伝えに従い、9月15日のかつての敬老の日(現在は9月の第3月曜日)は「ひじきの日」とされています。
海藻が地球温暖化抑止に有効であることは米国の研究者らによって指摘されましたが、世界の海藻養殖のほとんどは日本や中国などのアジア諸国で行われています。また、米国人は腸内細菌が日本人と異なることが原因で生の海藻を消化することができないため、海藻の栽培には消極的です。
残念なことに、日本は先のG20においても地球温暖化対策に対して明確な解決方法を示すことができませんでした。海藻が温暖化対策に有効であることが科学的に示された今、海藻が大好きな日本人が海藻による地球環境保護のリーダーシップをとれるチャンスなのではないかと考えます。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部)
【参考資料】
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)『土地関係特別報告書(*)』の公表(第50回総会の結果)について」(環境省)
「気候変動を緩和するための多目的ツールとしての海藻農業」(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)
https://www.news.ucsb.edu/2019/019595/charismatic-carbon
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/08/190829124250.htm
「食品成分データベース」(文部科学省)
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