問題のツイートは、12月9日に投稿されたもので、社内の栄養士の発言をいくつか紹介するなかで出てきた。そこで、ある栄養士が「生クリームは食べるプラスチック。害しかない」と発言したというのだが、これがネット上で広まり炎上騒ぎになった。
ツイッターで「健康的な食生活を提案する企業が、非科学的な発言をする栄養士を雇っているのが信じられない」「トンデモ栄養士だ」などと批判が相次いだ。タニタヘルスリンクは数時間後に当該ツイートを削除し、翌日に「不適切なツイートがありました」と謝罪した。問題のツイートを行った担当者にも処分があったようだ。
生クリームは危険?
さて、ところで先の栄養士の「生クリームは食べるプラスチック」という発言は、どのような意図があったのか。
「食べるプラスチック」という表現で思い浮かぶのは、トランス脂肪酸だ。マーガリンなどに多く含まれる成分で、米食品医薬品局(FDA)が6月、心疾患のリスクを高めるおそれがあるとして加工食品などへの使用を全面的に禁止すると決定し、話題となった。
このトランス脂肪酸が、英語で「Plastic Oil(プラスチックオイル)」と表現されることがあるため、日本では「食べるプラスチック」と勘違いされている節がある。そもそもプラスチックオイルと呼ばれるようになったのも、トランス脂肪酸は人工的に生成でき、その分子構造がプラスチックに似ているためだ。実際には、多くの人がイメージするプラスチックとはまったく別物だ。
トランス脂肪酸は牛や羊の胃の中でも生成され、牛乳やバターなどの乳製品にも微量ではあるが含まれているといわれる。だが、この天然のトランス脂肪酸と人工的につくられるトランス脂肪酸は別物だ。そして、この人工的なトランス脂肪酸が体に悪影響を及ぼすといわれている。
そのトランス脂肪酸が、生クリームには多く含まれているから食べないほうがいい、という意図で、先の栄養士は発言したのかもしれない。
コンパウンドクリームは絶対NG
しかし、これは不十分な情報だ。単に「生クリーム」という場合、牛乳から生成する「純生クリーム」と、植物油から生成した「植物性クリーム」、動物性と植物性を混合した「コンパウンドクリーム」の3つが含まれる。このうち、法律上「クリーム(または生クリーム)」といえるのは牛乳からつくったものだけだが、安いケーキなどに使われているクリームは植物性クリームやコンパウンドクリームが多い。
そして、このコンパウンドクリームが非常に多くのトランス脂肪酸を含有するのだ。100グラム中に含まれるトランス脂肪酸の量は、ショートニング(1.2~31グラム)、マーガリン(0.94~13グラム)に匹敵するほど多く、9~12グラムとされている。
このようなコンパウンドクリームでつくられたケーキやデザートは、あまり食べないほうがいいだろう。クリスマスが間近に迫り、これからケーキを食べる機会は増えてくるだろう。このような時季だからこそ、質の良い生クリームを選んで食べることは重要だ。