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白井美由里「消費者行動のインサイト」

スーパー、なぜ「~しただけ」でトイレットペーパー販売数が1.5倍に?驚きの消費者行動が判明

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

 買い物客の商品への接触機会を増やすことは、消費者にとっても小売店やメーカーにとってもベネフィットがあるのです。接触機会の提供が難しい場合には、買い物客の感性に合うような表現で接触情報を提供することで、商品評価や購買意欲を高められる可能性があります。製品を消費者の感性に合うようにデザインすることは重要ですが、買い物時点での接触と接触情報提供にも注目してみることをお勧めしたいと思います。

 なお、買い物客による接触で注意すべき点は、ほかの買い物客による接触です。ほかの買い物客が商品にベタベタと触っているのを目にして、その商品を買いたいと思う買い物客はいません。ほかの買い物客が試着したとわかると、Tシャツの評価が低下することを示した研究もあります【註10】。

 商品を自由に試せるようにしている店では、商品の陳列状態の確認をまめに行う必要があるでしょう。商品によっては売り物と区別したサンプルを売り場に置くのもいいですが、サンプルであっても、ほかの買い物客が触ったり試したりしたことがあからさまにならないような配慮が必要です。

 ドラッグストアスーパーなどでは化粧品売り場にテスターを置き、買い物客が自由に試せるようにしていますが、ほかの買い物客が何度も試したものに触れたくないという買い物客もいます。効果を上げるためにも、テスターの状態の定期的な確認と取り替えなどがあるといいでしょう。
(文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授)

【参考文献】

【註1】長町三生編(2005)、『商品開発と感性』海文堂出版
【註2】Peck,J.and T.L. Childers(2008),“Effects of Sensory Factors on Consumer Behavior,”in Handbook of Consumer Psychology,ed.C.P.Haugtvedt, P.M.Herr,and F.R.Kardes,Psychology Press,pp.193-219.
【註3】Klatzky,R.L.,S.J.Lederman,and D.E.Matula(1993),“Haptic Exploration in the Presence of Vision,”Journal of Experimental Psychology:Human Perception and Performance,19(4),pp.726-743.
【註4】McCabe,D.B.and S.M.Nowlis(2003),“The Effect of Examining Actual Products or Product Descriptions on Consumer Preference,”Journal of Consumer Psychology,13(4),pp.431-439.
【註5】Ellison,S.and E.White(2000),“‘Sensory’ Marketers Say the Way To Reach Shoppers Is the Nose,” The Wall Street Journal,November 24, http://www.wsj.com/articles/SB975016895886269171.
【註6】Krishna,A.and M.Morrin(2008),“Does Touch Affect Taste? The Perceptual Transfer of Product Container Haptic Cues,”Journal of Consumer Research,34(April),pp.807-818.
【註7】Peck,J.and T.L.Childers(2003),“To Have and To Hold:The Influence of Haptic Information on Product Judgments,”Journal of Marketing,67(April),pp.35-48.
【註8】Peck,J.and T.L.Childers(2006),“If I Touch It I Have to Have It:Individual and Environmental Influences on Impulse Purchasing,”Journal of Business Research,59(6),pp.765-769.
【註9】Peck,J.and S.B.Shu(2009),“The Effect of Mere Touch on Perceived Ownership,”Journal of Consumer Research,36(October),pp.434-447.
【註10】Argo,J.J.,D.W.Dahl,and A.C.Morales(2006),“Consumer Contamination:How Consumers React to Products Touched by Others,”Journal of Marketing,70(April),pp.81-94.

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

学部
カリフォルニア大学サンタクルーズ校 1987年卒業
大学院
明治大学大学院経営学研究科
1993年 経営学修士
東京大学大学院経済学研究科
1998年 単位取得退学
2004年 博士(経済学)
慶応義塾大学 教員紹介 白井美由里 教授

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