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大西睦子「ボストン健康通信」

生オレンジジュース、角砂糖7個分の砂糖含有…果物そのまま摂食、多大な病気予防効果

文=大西睦子/内科医師、医学博士
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中国の研究から学ぶこと

 それでは、果物は栄養学的に野菜と違いがあるのでしょうか?

 そのひとつの答えになる大変興味深い論文が、先月4月7日付の医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に発表されました。

 これまで欧米での研究により、果物を食べる人は心血管疾患のリスクが低いことはたびたび示されてきました。ただし、それらは欧米での研究成果で、アジア人種を中心とした研究ではありませんでした。そんななか、中国全土5つの都市部と5つの農村部の地域に住む51万2891人(30~79歳)の中国人を対象とした大規模疫学研究から、生の果物を毎日食べる人は食べない人に比べて、心血管疾患による死亡が40%、主要冠動脈イベントは34%、虚血性脳卒中は25%少なく、出血性脳卒中は36%少ないことが示されました。

 また、果物の摂取量にかかわらず、ほとんどの中国人(約95%)は新鮮な野菜を毎日食べていましたが、欧米人に比べて果物の摂取量がはるかに少ないようです。つまり、心臓発作や脳卒中のリスクの低下は、野菜ではなく、果物摂取の頻度の違いによってもたらされたものと考えられます。

 残念ながらこの研究では、生の果物が血圧や血糖値、心血管疾患リスクを低く保つメカニズムまでは解析されていません。また、今回の研究では果物の種類についてデータはなく、季節や地域によって大きく変化する可能性もありますが、中国で最も一般的に食べられている果物は、りんごや柑橘類、梨などです。

果物には、こんなにたくさんのメリットがある!

 一般に果物は、カリウムや葉酸、食物繊維、フィトケミカルなどを豊富に含む一方、ナトリウムや脂肪をほとんど含まず、カロリーの低い食品です。これらの栄養素が、中国の研究のような結果をもたらしたことも考えられます。

 フィトケミカルは、植物が細菌、ウイルスや真菌、紫外線などの外敵から自分の身を守るためにつくり出した化学物質で、植物に鮮やかな色(黄色、オレンジ、赤、緑、白、青、紫)、香りや味を与えます。例えば、ポリフェノール、イソフラボン、カロテノイドなどは、フィトケミカルの仲間です。フィトケミカルが足りなくても5大栄養素のように欠乏症にはならないものの、その抗酸化作用、抗がん作用、抗炎症作用や免疫増強作用など多くの機能が注目され研究が進んでいます。

 ただし、フィトケミカルは加熱に弱い性質があります。野菜は加熱調理することが多く、フィトケミカルの効果が低下する可能性があります。それに調理をすると、塩分や油を過剰に摂取することが懸念されます。果物はそのままいただけるので、そのような心配はなさそうですね。

大西睦子/内科医師、医学博士

大西睦子/内科医師、医学博士

内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に、「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側」(ダイヤモンド社)、「『カロリーゼロ』はかえって太る!」(講談社+α新書)、「健康でいたければ『それ』は食べるな」(朝日新聞出版)。

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