世は相変わらず糖質制限ブームです。「糖質のない焼酎に変えたから、いくら飲んでも大丈夫」「炭水化物をやめれば、その分、肉や油はいくら食べてもOK」などという怪しげな言い訳が蔓延しています。今回は、これに反論を試みてみましょう。
(1)炭水化物制限
「炭水化物を取りすぎるとインスリン分泌が増えて肥満になる」という考え方が広まっています。これは一見正しいようですが、実は逆なのです。炭水化物を制限すると生命の維持に必要なブドウ糖が不足するので、脂質やタンパク質からブドウ糖をつくらなければなりません。この「糖新生」の副産物としてつくられる遊離脂肪酸がインスリン感受性を下げるため、結果的にインスリンの分泌を増やすのです。
昭和30年代のように今の2倍から3倍のお米を食べていた頃は、意外と糖尿病や肥満が少なかったのです。広島大学が1970年から継続している医学調査「ハワイ・ロサンゼルス・広島スタディ医学調査」という調査があります。昔から広島はハワイに移住する人が多かったんですね。日本人がロスやハワイに移住してアメリカ風の食生活、つまり炭水化物が少なくて脂肪の多い現地の食生活を続けると、遺伝的に同じ日本人でありながら海外在住の人ではインスリン分泌が増えることがわかりました。生まれより育ちが大事なんですね。
これに関して、「十分な炭水化物があったほうが、無駄なインスリンを分泌しないので、うまく血糖をコントロールできていたのではないか」という説が唱えられています。炭水化物は毒ではないのです。炭水化物の食べ過ぎが体に良くない、ひいては肥満の原因になるのですね。何事も適量が大切なのです。
(2)焼酎ならいくら飲んでも体に良い?
お酒に関していえば、日本酒やワインに含まれる糖質は、重症の糖尿病の人以外には問題になるような量ではありません。ポン酢や醤油に含まれる糖質なんて微々たるものです。