東京・銀座のハンバーグがおいしい老舗店では、セントラルキッチンで鮮度の良い牛を1頭丸ごと仕入れて、ハンバーグにした時に口に残る筋や骨などを取り除き、8cmほどのブロックに加工します。挽肉料理で筋が口に残るという現象は、挽肉にする前に筋を取り除くのが不十分な場合に起きてしまいます。
このブロック肉を、ハンバーグをつくる直前に店舗で挽肉にします。肉は、挽いた瞬間から酸化し、味が落ちてしまいます。肉を挽いてから焼くまでの時間が短いほうがおいしいのです。冒頭に挙げた老舗店では、お客に提供するハンバーグについて、いつ挽肉にしたかを店頭に時間を表示するほど、おいしさにこだわっています。
家庭でハンバーグをつくる際にも、精肉店でブロックになっている肉を「この肉をハンバーグ用に挽肉にして」と頼んだほうが、すでにパックになっている挽肉を調理するよりもはるかにおいしくできます。
挽肉は、挽いてから時間がたつと黒く変色してしまいます。一方、脂肪を多く入れると挽肉自体が白っぽく見えてしまいます。そこで、色が濃い肉を使用すると、退色なども防げ、見栄えのいい挽肉をつくることができます。
挽肉に使用する肉は、ロース肉などと違う“挽肉専用”の豚肉を使っている精肉店があります。豚は、産まれた後、半年程度飼育されてから、肉用として出荷されます。挽肉には、ロース肉などに使用する豚を産んだ母豚や、種付けを行った父豚の肉が使われていることが多くあります。母豚、父豚は、飼育日数が長く、大きく育っているので「大貫豚」と呼ばれています。大貫豚は、赤身の色が濃く、挽肉はおいしそうな色になりますが、繊維が固く、獣くさく感じます。
おいしい挽肉料理を食べるためには、料理によって部位を選び、目の前で挽いてもらうことが重要です。解凍肉ではない肉、すなわち屠殺されてから一度も凍結されていない肉を、調理する直前に精肉店で挽いてもらって料理するのです。ちなみに、解凍した原料肉を使用している挽肉は、「解凍」と表示してあるはずです。