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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

花粉症、肉・牛乳・砂糖菓子で悪化!食べるだけで治る「ごはん」!

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 唐辛子など刺激の強い香辛料を使った食品やアルコールなどは、粘膜の毛細血管を刺激して、鼻水がひどくなることもあります。

 また、タバコの煙に含まれる有害物質も鼻の粘膜を刺激し、体内の活性酸素を増やし、花粉症の症状を悪化させてしまいます。自分だけではなく、周りにいる人のためにもぜひタバコは控えてください。

 外食をするときは、やはりバランスの取れた和食の定食がおすすめです。野菜や海草、豆類なども意識して摂るようにしましょう。

 ヨーグルトや甜茶、レンコンなどは花粉症に良い食べ物とされていますが、食べたらすぐに症状が軽くなるといった対処的に使う「薬」のようなものではありません。日々食べることでその効果が発揮されるものですから、花粉症の症状が出てから食べるのではなく、普段の食事にバランスよく取り入れるようにしましょう。

 高カロリーになりがちな食事はできるだけ控えめにして、多くの栄養素や成分が摂れるようにバランスのよい食事を心がけることが一番の花粉症対策です。

ごはんを食べるだけで花粉症が治る時代へ

 最近、その開発が注目されているのが「スギ花粉症緩和米」です。スギ花粉症緩和米は、「食べて治す治療法」として農林水産省所管の農業生物資源研究所と日本製紙が共同で研究開発を行っていて、昨今行われている注射や舌下での減感作療法と同じように、毎日食べる「ごはん」によって、スギ花粉に対する免疫治療をしようというものです。

 本連載前回記事でも説明しましたが「減感作」とは、体の中にできてしまった花粉に対する抗体を減らして、過剰なアレルギー反応が出ないようにするという意味です。具体的には、注射や舌下から吸収させることで、原因となっている抗原(花粉)を少しずつ増やしながら体内に入れていく治療法で、徐々に抗原に慣れさせて、最終的にはアレルギーが起こりにくい体質に変えていこうというものです。治療自体には2~5年間が必要ですが、対症療法とは違い、アレルギーを治すことが可能です。スギ花粉症の人に対する有効率は約60~70%といわれていますが、治療期間が長くかかること、注射量の加減の見極めが必要なこと、注射を受けるために病院へ通わなければならないこと、舌下が習慣付けられないことなどから、なかなか普及しないのが現状です。

 この減感作療法を、「ごはんを食べる」という行為で行えるようになれば、注射に比べてはるかに負担がかからず、忘れずに摂取することができます。また、長期にわたって何回も病院に通う必要もありません。つまり、患者さんにとって、もっとも日常的に取り入れられる治療法だと考えられます。

「スギ花粉症緩和米」は遺伝子組み換え技術を利用して開発に取り組んでいます。マウスを用いた薬効試験では、半年から1年ほどの摂取で花粉症の症状が抑えられることが確認されています。

 現在は、このスギ花粉症緩和米を食品として食べたときに、毒性や発ガン性がないか、食べ過ぎても大丈夫かなどに関する研究が重ねられています。また、作物として栽培するときに、ほかのイネや作物に影響を及ぼすおそれがないか、また、普通のイネと区別して流通させることが可能かなどについても研究が進められているようです。

 こうしたさまざまな研究が行われていますが、順調に開発が進めば、2020年ごろには実用化される見込みです。遺伝子組み換え米を長期間食べ続けることで、人体に害が及ぶのではないかという懸念もありますが、近い将来「ごはんを食べて花粉症を治す」ことができる時代になりそうです。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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