米国でPSA(前立腺特異抗原)検査による前立腺がんスクリーニングを受けた男性のうち、検査のリスクとベネフィットについて医師と話し合った人がわずか3分の1未満にすぎないことが新たな研究により示され、「Urology」オンライン版に3月18日掲載された。
つまり、米国でもほとんどの患者が、説明をよく聞かないままPSA検査を受けていることになる。
70歳以上ではPSA検査による検診を推奨しない
PSAは、前立腺の上皮細胞と尿道の周囲の腺から分泌される前立腺特異抗原(糖タンパクの一種)。前立腺にがんができると、このPSAの分泌量が増加するために、早期発見のスクリーニング検査として行われる。
日本では健康な一般集団を対象とした住民検診に導入されている場合が多い。しかし、がんの死亡率が下がるという証拠はないともいわれ、アメリカでも試行錯誤が続いていた。
今回の研究は、米国予防医療作業部会(USPSTF)が2012年に出した「年齢を問わず前立腺がん検診を推奨しない」というガイドラインと関係している。
米国泌尿器学会(AUA)などは、同ガイドライン発表直後から「前立腺がんの病期がより進行した段階で診断がつくことになってしまう」「前立腺がんによる死亡件数の増加につながる」などと強く反発していた。
しかし、今回、USPSTFの専門家パネルは4月11日、2012年以降の最新のエビデンス、米国内における治療法選択状況の変化などを参考に、70歳以上については従来通り、メリットよりもリスクが上回る恐れがあるため「PSA検査による前立腺がん検診を推奨しない」とした。
だが、69歳以下のグループ(55~69歳)については、PSA検査を実施するかどうかを患者と担当医との共有の意思決定に基づいて個別に判断すべきと、これまでのガイドラインより緩やかな条件に変更した。
今回の研究を実施した米ロードアイランド大学のGeorge Turini III氏らによると、2012年にUSPSTFが発行した前回のガイドラインが医療従事者の診療パターンに影響し、スクリーニング前の詳細な話し合いがされなくなったことが示唆されたという。
ただし、患者が意思決定に必要な情報を得ているのかを確認するには、さらに研究を重ねる必要があるとしている。
要するに明確な理由はわからないものの、患者の3分の2以上がよく理解しないままPSA検査を受けていたことだけは事実のようだ。