頸椎を押し戻す「あご押し」でケア
「頸椎の圧迫で頭痛やめまい、イライラの症状が起こるのが第1段階。そのまま放っておくと、頸骨の骨と骨の間にある椎間板の中の髄核がつぶれ始めます。これが第2段階。最終段階では、髄核が椎間板の外にはみ出し、神経を圧迫します。強い痛みやしびれを、首・肩・腕・手にまで感じるようになり、思いどおりに腕や手を動かせなくなってしまうのです」(同)
首のこりや痛み、そして頭痛、めまい、イライラといった第1段階での対処が重要だ。そこで酒井氏が勧めているのが、頸椎を押し戻す「あご押し」だ。やり方は簡単で、手の親指と人さし指であごを後方へグッと強く押し込む。
「あご押しを何度も繰り返しているうちに、頸椎が徐々に元の位置に押し戻され、本来のカーブを取り戻すのです」と話す酒井氏自身も、信号待ちのときなど暇を見つけては、あご押しを行っているそうだ。
エアコン風での「首の痛み」「手のしびれ」には全身浴
梅雨シーズンで注意が必要なのは「エアコンの風」だ――。
「梅雨時と夏場は、ほとんどの職場や家庭でエアコンを使います。首がエアコンの風に当たって冷やされることで、血流が悪化し、筋肉が硬くなります。そして痛みやしびれといった症状が悪化してしまうのです」(同)
快適に過ごすために使っているエアコンに、首の痛みや腕のしびれを招く原因があったのだ。冷えで悪化した症状を改善させるのが全身浴である。
「39度くらいのお湯に10~20分程度、首までつかっていると、痛みもしびれもかなり楽になります。下半身だけ湯ぶねにつかる半身浴は、首や肩が冷えてしまうのであまりお勧めしません。そして髪が長い人は、おふろ上がりにすぐドライヤーで髪を乾かしましょう。濡れた髪は首と肩を冷やしてしまうからです」(同)
頸椎椎間板ヘルニアの痛みがあまりにも強い場合は、全身浴が効果的とのこと。首を動かせるようになったら、軽い力であご押しを試し、痛みが出ない範囲で少しずつ力を加えていくとよいそうだ。
「痛みやしびれがあると、ほとんど体を動かさない人もいます。しかし、安静にしたままでは症状は変わりません。ですから、あご押しやストレッチなどを行って、関節を動かすように心がけましょう。関節をきちんと動かせば、ヘルニアは自然に引っ込みます。現在では『ヘルニアは手術をしなくても治るので、保存療法から始めるのがいい』という考えが主流です」
(取材・文=森真希)
酒井慎太郎(さかい・しんたろう)
さかいクリニックグループ代表。柔道整復師。中央医療学園特別講師。千葉ロッテマリーンズ・オフィシャルメディカルアドバイザー。整形外科や腰痛専門病院、プロサッカーチームの臨床スタッフとしての経験を生かし、腰痛やスポーツ障害の疾患を得意とする。解剖実習をもとに考案した「関節包内矯正」を中心に、難治の関節痛に対する施術を行い、これまで100万人を治してきた実績を持つ。多くのテレビ番組で「ゴッドハンド」として紹介されるほか、プロスポーツ選手や俳優など多くの著名人の施術も手がける。
森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。