乳酸菌やビフィズス菌、健康に「有効性ない」との研究相次ぐ…オリゴ糖も効果は不明
日和見菌が肥満を予防する?
最近の知見においては、比率的にバクテロイデス門が減少し、ファーミキューテス門が増加すると、肥満や血糖上昇に結び付きやすいという、複数の報告があります。
2014年の「Microbial Ecology in Health & Disease」誌の論文によると、エストニアでの研究により、腸内細菌でのバクテロイデスや嫌気性連鎖球菌が減少するほど、血糖値と肥満のリスクが上昇するという結果が得られています(参考文献2)。
乳酸菌は悪玉菌?
従来善玉菌とされてきた乳酸菌の一種のラクトバチルスは、ファーミキューテス門に属し、その増加が関節炎や血糖上昇のリスクになる、という報告があります。これも善玉菌の代表のようにいわれるビフィズス菌も、アクチノバクテリア門に属し、乳児期には腸内細菌の主体であるのですが、5歳以降のデータでは、その比率が大きいと肥満や血糖上昇に結びつきやすいとする報告があります。
乳酸菌やビフィズス菌の効能というと、代表的なものは風邪などの感染症の予防と抗生物質による下痢の予防です。ただ、こうした効能にも疑問を投げかけるような報告が相次いでいます。13年の「Lancet」誌に掲載されたイギリスの論文によると、乳酸菌とビフィズス菌の合剤を抗生物質と一緒に使用しても、偽薬と下痢や腸炎の発症頻度に違いはありませんでした(参考文献3)。
12年の「The American Journal of Clinical Nutrition」誌の論文によると、偽薬を使用した厳密な研究において、乳酸菌による風邪の予防効果は認められませんでした(参考文献4)。
確かに動物実験や少数例での臨床試験では、免疫力を強化して感染を予防した、というような報告が多数あるのですが、その研究としての厳密性はそれほど高いものではなく、特定の商品となっている乳酸菌を販売しているメーカーが関与している研究がほとんどなので、その信頼性もそれほど高いとはいえないのです。
乳酸菌が悪玉菌であるという根拠もあまりないのですが、善玉菌であるという評判も、それほど根拠のあるものではないようです。
腸内細菌の多様性とバランスが健康のカギ
バクテロイデス門とファーミキューテス門の比率が、生活習慣病に関与しているという知見の一方で、多くの腸内細菌がバランス良く生育している、つまり腸内細菌の多様性が高血糖や肥満を予防する、という報告も最近複数発表されています。