母親が自身と子の生活習慣を変えていく
足立区はもうひとつ、区民が解決すべき課題を指摘する。それが「生活習慣の改善」だ。
足立区が乳幼児健診時に母親を対象に行った調査で、家族に糖尿病歴がある、または妊娠時に尿糖があり、「糖尿病のリスクあり」と診断された人が32%に達した。
こうした家庭では、母親だけでなく、生活習慣により子どもも将来、糖尿病になる恐れがある。そのため、母親が早期に自分自身と子どものリスクを認識し、予防を念頭においた生活習慣に変えていく必要がある。
また、足立区の中学2年生を対象に行った小児生活習慣病予防健診では、男子の約20%、女子の約27%が生活習慣病の有所見者だった(平成24年度「足立区学校保健統計小児生活習慣病予防健診結果」)。
これらの結果を見る限り、将来の糖尿病などの発症を防ぐため、子どものうちから生活習慣を見直す必要に迫られていると、足立区では危機感を強めている。
老いも若きも「ベジ・ファースト&野菜ちょい増し!」
こうした結果を受けて、足立区で行われている取り組みが「ベジ・ファースト」、つまり「野菜から食べる」という生活習慣の浸透なのである。
野菜から食べることで、動脈硬化の予防につながり、糖尿病のほか心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病の予防にも役立つ。これを子どものころからの習慣にすべく、足立区では野菜料理を積極的に提供する「ベジタベライフ協力店」を募集するなど、あちこちでPRを行っている。
今年6月の「食育月間」には、「ちょい増し野菜」をテーマに掲げ、「レタスをちょい増し」「トマトをちょい増し」など、お皿に野菜をほんの少しプラスするだけでOKという、想像以上に(?)ハードル低めなアドバイスをリーフレットや足立区ホームページなどで提案した。
6月の「食育月間」に配布されたリーフレット
こうした足立区の取り組みは、新聞やテレビ等のメディア、全国の自治体からも注目されている。足立区役所「こころとからだの健康づくり課」糖尿病対策担当係長の小林智春氏は、次のように語る。
「これまでも、糖尿病対策の講座やイベントは開催していましたが、一部の健康への意識の高い人だけがより健康になり、健康格差が広がる一方でした。今は『野菜から食べる』を切り口に、誰もが簡単にアクセスできるよう、ホームページやAメール(登録制の足立区メール配信サービス)などでも情報を発信。区民全体が享受できる施策が注目を浴びている理由ではないでしょうか」
カップ麺に、レンジでチンしたもやしをのせるだけでOK
足立区ホームページにある「早うま!かんたんベジレシピ」には、管理栄養士がすすめる超カンタンレシピが多数掲載されている。
たとえば「○○系みたいなもやしたっぷりラーメン」は、カップ麺に電子レンジでチンしたもやしをのせるだけ。「これでレシピといえるのか」との疑問が湧くが、やってみるとたったそれだけで「ひと手間かけた感」が出て、しかも意外とウマイ。そんなレシピが満載なのだ。
「入り口に立ってもらえれば成功、と思っています。まな板も包丁もない、という家庭も結構あるのが実態です。難しい料理を提示すると、そこで尻込みしてしまうので、『この程度でいいならやってみようかな』と、少しでも関心を持ってもらいたいと考えて提案したレシピです」(同)
これで、あなたの持つ足立区へのブランドイメージは少し変わるだろうか。
(文=ヘルスプレス編集部)