私たちの頭上から、地球を精密に観測する衛星や火星表面を旅する惑星探査機、そして宇宙の素晴らしい写真を見せてくれる宇宙望遠鏡。数ある人工衛星・探査機の中でも華やかな存在ですが、打ち上げから40年も経過し、孤独な宇宙の旅を続けながら、今でも地球にデータを送り続けている“いぶし銀の美”ともいえる探査機があります。それが、ボイジャー1号と2号です。
1号は1977年9月5日、トラブルで打ち上げが遅れた2号は同年8月20日にそれぞれアメリカ航空宇宙局(NASA)によって、木星より外側の太陽系惑星を詳細に観測することを目的として打ち上げられました。今年は、両探査機の打ち上げから40周年となります。
ボイジャー1号と2号による発見は数々ありますが、木星表面の巨大な目玉のような模様は巨大なガスの渦であること、ガリレオが発見した木星の衛星「イオ」には火山があること、土星のリングの正体は数mmの氷の粒の集まりであること、などはその代表です。
両機はすでに太陽系の惑星探査を終え、現在は原子力電池の電力が続く限りの観測を続けながら、二度と地球には戻らない旅を続けています。
太陽の寿命はあと半分?地球を襲う消滅危機
ところで、地球に住むすべての生命の源である太陽の寿命は、あと残り半分程度しかないことをご存じでしょうか。太陽の今後については、太陽に似たほかの星の観測結果からだいたい予想されており、赤色巨星という、今よりはるかに明るく巨大な赤い星となると見られています。
太陽の大きさ自体が現在の地球の軌道付近まで巨大化し、水星と金星は太陽に飲み込まれてしまいます。このとき、地球がどうなるのかについては天文学者によって意見が分かれています。
地球は巨大化し、希薄になった太陽の内部を公転する惑星となってやがて溶けて消滅するという説、太陽の膨張によって地球の軌道も外側に広がり、そのまま惑星として存在し続けるという説などがあります。
いずれにしても、地球の運命は溶けてなくなるか間近に迫った太陽表面からの熱で焼き尽くされる可能性が高いといえます。それまでの残り時間はおよそ50億年です。
つまり、地球の進化の記録である太古の生物化石も、私たちが築いた文明も、あと50億年以内に宇宙から消えてなくなってしまうのです。これは、地球という生命を宿した星が宇宙に実在した証拠を失うことでもあります。
しかし、ボイジャー探査機には地球の音、写真、人類から未知の文明へのメッセージを記録した黄金のレコードが搭載されています。このレコードには、日本語を含めた世界各国の言語で「こんにちは」のあいさつが録音され、地球の美しい風景やジェット旅客機など当時の最新技術を紹介する写真、そして学校での授業の様子や日常生活を撮影した写真が収録され、データを再生するためのレコード針とその使い方の図解が添えられています。
このレコードを携えて、1号は2012年に太陽圏を飛び出し、恒星間空間へ入った人類史上唯一の探査機となりました。現在は、9月の日本から見ると頭上方向やや南寄り210億km離れた場所にいます。そして、2号は日本からは見えない太陽系の南方向へ飛行し、こちらも1号に次いで数年のうちに恒星間空間に入ると考えられています。
『宇宙と地球を視る人工衛星100 スプートニク1号からひまわり、ハッブル、WMAP、スターダスト、はやぶさ、みちびきまで』 地球の軌道上には、世界各国から打ち上げられた人工衛星が周回し、私たちの生活に必要なデータや、宇宙の謎の解明に務めています。本書は、いまや人類の未来に欠かせない存在となったこれら人工衛星について、歴史から各機種の役割、ミッション状況などを解説したものです。