K 困った警察官が、私にどうしてほしいか尋ねてきたので、「私の保険証のコピー、問診票で書いた用紙、採血した血液と、撮ったレントゲンを、全部返してほしい」と要求しました。それに対してクリニック側は、「これはすべてうちのものです。返せません」と対応。治療しない、患者に暴言を吐く、警察を呼ばせる、退去命令を押し付ける、レントゲンなども返さず、そのくせ金だけはきっちり取る。もう、無茶苦茶にもほどがある。けれど、警察は何もできないんです。私はバカバカしくなって、「もういいです」って帰ろうとしたんですけど、警察に住所や連絡先、職場まで根掘り葉掘り、自分が悪者かのように聞かれました。ひどい目に遭わされたのは私なのに、悲しくなりました。
“事件”から1週間後、クリニックから来た復讐
K 結局、警察官にすべて話して、ようやく解放されました。これ以来、寝ている時以外は、腹が立って仕方なく、頭が割れそうになりました。そして、あの出来事から約1週間後、職場の偉いさんであるAさんから呼び出されたんです。普段ないことなので、不思議に思いながらいくと、Aさんに「この間、耳鼻科に行きましたか? その時のこと、詳しく聞かせてもらえますか?」って、冷たい表情で言われたんです。
——保険証とかを見せているから、そこから足がついたんですね。
K はい。私は、まさか保険証を勝手に利用して、ここまで攻撃してくるなんてと驚きました。あれだけ散々な悔しい思いをしたのにって、涙ぐみながらあの日の経緯を、Aさんに順に話していきました。すると、徐々にAさんの反応や表情が変わっていったんです。
——そもそも、なぜ会社のお偉いさんに呼び出されたんですか?
K クリニックが私の職場に手紙を寄越してきたんです。私から多大な迷惑を被ったと支離滅裂に書き連ね、そして最後に謝罪しろって書いてあったみたいです。私は、一人でまたあのガム女たちと争わなければいけないと思うと目まいがしました。でも、そこでAさんが、「こちらサイドは一切謝らないから。それでもし、クリニックがことを大きくするのなら、戦ってあげる。うちの病院相手に向こうが勝てるわけない」って言ってくれたんです。私は今回の件でやっと理解してくれる人が現れ、それも職場で偉いAさんにっていうのが嬉しくて。
——クリニックからの連絡はそれだけでしたか?
K その約1週間後、私の家のポストに、クリニックの案内パンフレットが10冊くらいまとめて投函されてました。たぶん、職場から謝罪がないので、直接嫌がらせをしてきたんでしょう。それから約2週間、ほぼ毎日続きました。ですが、今はそれもなくなり、ようやく落ち着いた日々を取り戻せています。
彼女がしたこと、それはただ近所のクリニックへ診察に訪れただけだ。しかし、そこからこれほどの騒動に巻き込まれるなど、想像もできなかっただろう。我々の日常には、このように誰しも陥りかねない恐怖が待ち受けているのである。
(文=花田庚彦/ライター)