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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

「加工食品は毒、天然物は安全」は大間違い? 誤った調理法によって食中毒の例も

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授
「加工食品は毒、天然物は安全」は大間違い? 誤った調理法によって食中毒の例もの画像1「Thinkstock」より

 食品は生命を維持するために必要不可欠なことは論を待ちません。食品は栄養価があり、美味しくて、しかも安全であることが求められます。私たちが当たり前に食べているものはいつから食品になったかは、よくわかりません。決して神様が決めてくれたものではなく、大昔から多くの犠牲を伴いながら、食べられるものと食べてはいけないものを習得し、伝承してきたのではないでしょうか。

 例えば、船が難破して、大好きな人と2人で木が生い茂る無人島に流れ着いたとします。誰もが、最高に幸せに感じると思います。しかし、時間が経ち落ち着いてくると空腹が襲ってきます。偶然にポケットにお金が入っていても何の役にも立ちません。周りを見てもスーパーやコンビニエンスストアで売っているようなものは見当たりません。
 
 おそらく誰もが草や葉っぱで食べられそうなものがあれば口にしてみて、それが特に美味しくはなくても問題なければ、とりあえず食べ物として認知し、知らない魚もとりあえずは食べてみるのではないでしょうか。島の生活にも慣れて、少し食べるものの範囲を広げる途中で、お腹が痛くなったり、下痢をするものに遭遇すると、それは食べられないものに分類するはずです。無人島の生活も長くなると、便秘をすることもあるかもしれません。幾日も便秘をすると気分が悪くなり、苦しくなります。そのような時に、以前食べて下痢をしたものを思い出し、今度はほんの少し食べて便秘が解消すると、それは薬として認知するのではないでしょうか。

 第二次世界大戦で南方の激戦地に行き、戦ってきた人の話を聞いたことがあります。「お腹が空いて動くものはすべて食べた。蛇や野鼠はご馳走だ」という話を聞かされたことがあります。 

 私たちの祖先が地球上に生存するようになった時から、何かを食べ続けて生命を維持してきたはずです。過去の多くの犠牲と経験を伝承して、我々は市販食品を当たり前のように食べています。

食べ物と文明

 古代文明の発祥地といわれている所は、いずれも水があり、食べ物があるところに人が集まって文明が始まりました。現在、地球上に70億人以上が生活しているといわれています。国により食べるものに大きな差はあるにしろ、何かしら食べ物があるので生きていけるわけです。

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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