2017年12月23日、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が気候変動観測衛星「しきさい」の打ち上げに成功しました。しきさいは、JAXAが推進する地球環境変動観測ミッション(GCOM:Global Change Observation Mission)に必要な情報を収集する人工衛星です。
GCOMでは、10~15年の長期にわたって地球全体の降水量や気温、植物の生育など気候の変動と密接に関係する情報を人工衛星を利用して観測し、地球規模の気候変動や食料資源量の将来予測などを行います。
しきさいは5年以上の安定した観測を行うために、電源系統や制御系統を2系統化することによって、1系統に故障が発生しても衛星の性能に影響を与えないような設計になっています。同様の役目を担う衛星は、すでに水循環変動観測衛星「しずく」が運用されており、さらに4基の打ち上げが計画されています。
これらの衛星から得たデータは、国内研究機関による解析のほか全世界の研究者に提供され、国際的な地球観測計画である全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画でも活用されます。
しきさいの全長は4.7m、質量は約2tです。少し背の高いタクシーほどの大きさの本体には太陽電池パネルが左右対称に1対搭載されており、太陽電池パネルを展開したときの全幅は16.5mになります。
軌道は、北極と南極を通過して地球を縦割りにする極軌道を高度800kmで周回します。搭載している観測装置は「可視~熱赤外多波長光学イメージャ(SGLI)」で、紫外線から可視光線を含め赤外線領域までの広い波長域で撮影が可能なデジカメのようなセンサーです。
地上解像度は250m~1kmで、地球上の同一地点を2~3日ごとに観測します。太陽エネルギーを反射したり吸収したりする、ちりや雲、二酸化炭素を吸収する植物や海洋プランクトンなどの分布に関するデータの収集を行います。また、地球の熱の出入りを予測して、将来の気温の変動を予測したり気候変動による生態系の変化を観測したりすることによって、将来の気候が食糧供給や私たちの生活にどのような影響を与えるかを予測します。
地球温暖化が生涯賃金にまで影響?
2016年は世界平均気温が過去最高値を更新し、特にアジアでは異常高温の影響でインドで580人の死者が出るなど、日本も含め各国で死者が続出しました。さらに、アラスカでは海水温の上昇により有毒藻が大量発生したり、永久凍土が溶けて地中の温暖化ガスが大量放出されたりするなど、これまで私たちが経験したことのない異変が地球に起き始めています。
それらの原因が人為的なものであることがアメリカ気象学会で報告され、「人類が地球環境に配慮した活動をしなければ、異常気象はさらに増大する」と警告されています。
また、スタンフォード大学が「米国科学アカデミー紀要」に発表した報告では、地球の平均気温が上昇し猛暑日が増えることは、アメリカ人新生児の生涯賃金にまで悪影響を及ぼすことが指摘されています。
『宇宙と地球を視る人工衛星100 スプートニク1号からひまわり、ハッブル、WMAP、スターダスト、はやぶさ、みちびきまで』 地球の軌道上には、世界各国から打ち上げられた人工衛星が周回し、私たちの生活に必要なデータや、宇宙の謎の解明に務めています。本書は、いまや人類の未来に欠かせない存在となったこれら人工衛星について、歴史から各機種の役割、ミッション状況などを解説したものです。