文部科学省が小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施している学力調査(全国学力・学習状況調査)の結果が先頃公開されたことに関連して、前回は親が与える知的刺激や蔵書数と子どもの学力の関係について解説した。今回は、子どもの学力に対する家庭環境の影響について、もう少し違った側面から検討してみたい。
父親が単身赴任しているほうが子どもの学力が高い
今回も平成29年度に実施された学力調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書のデータを用いることにする。
その報告書については、前回取り上げなかった調査結果の箇所に関して、父親が家庭に不在なほうが子どもは勉強に集中できるといった解釈を示している記事もみられたためか、「父親はあまり家にいないほうが子どものために良いのか」といった問い合わせもあったので、そのあたりについて考えてみたい。
調査報告書では、「保護者の単身赴任と子どもの学力の関係」をみている。その結果、父親の単身赴任と母親の単身赴任では、子どもの学力に与える影響が真逆になることが示唆された。
父親が単身赴任している家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもと比べて、やや学力が高かった。それは、小学6年生の国語や算数でも、中学3年生の国語や数学でも一貫してみられる傾向だった。
それに対して、母親が単身赴任している家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもと比べて、明らかに学力が低い。その差は、父親の場合よりも大きかった。そうした傾向は、小学6年生の国語や算数でも、中学3年生の国語や数学でも一貫していた。
以上のような結果から、「父親が単身赴任することは子どもの学力に好影響を与えるが、母親が単身赴任することは子どもの学力向上に悪影響を与える」と結論づけてよいものだろうか。これについては、のちほど検討することにしたい。
父親の帰宅時間が遅いほうが子どもの学力が高い
調査報告書では、「保護者の帰宅時間と子どもの学力の関係」についてもみているが、これも父親と母親では真逆の傾向がみられた。
父親の場合、小学6年生でも中学3年生でも、そして国語でも算数・数学でも、「22時以降に帰宅する」家庭の子どもがもっとも学力が高く、帰宅時間が早い家庭の子どものほうが学力が低い傾向がみられる。