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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

父親が単身赴任・専業主婦のほうが子どもの学力が高い、その理由への危険な誤解

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
父親が単身赴任・専業主婦のほうが子どもの学力が高い、その理由への危険な誤解の画像1「Gettyimages」より

 文部科学省が小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施している学力調査(全国学力・学習状況調査)の結果が先頃公開されたことに関連して、前回は親が与える知的刺激や蔵書数と子どもの学力の関係について解説した。今回は、子どもの学力に対する家庭環境の影響について、もう少し違った側面から検討してみたい。

父親が単身赴任しているほうが子どもの学力が高い

 

父親が単身赴任・専業主婦のほうが子どもの学力が高い、その理由への危険な誤解の画像2『その「英語」が子どもをダメにする』(榎本博明/青春新書INTELLIGENCE)

 今回も平成29年度に実施された学力調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書のデータを用いることにする。

 その報告書については、前回取り上げなかった調査結果の箇所に関して、父親が家庭に不在なほうが子どもは勉強に集中できるといった解釈を示している記事もみられたためか、「父親はあまり家にいないほうが子どものために良いのか」といった問い合わせもあったので、そのあたりについて考えてみたい。

 調査報告書では、「保護者の単身赴任と子どもの学力の関係」をみている。その結果、父親の単身赴任と母親の単身赴任では、子どもの学力に与える影響が真逆になることが示唆された。

 父親が単身赴任している家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもと比べて、やや学力が高かった。それは、小学6年生の国語や算数でも、中学3年生の国語や数学でも一貫してみられる傾向だった。

 それに対して、母親が単身赴任している家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもと比べて、明らかに学力が低い。その差は、父親の場合よりも大きかった。そうした傾向は、小学6年生の国語や算数でも、中学3年生の国語や数学でも一貫していた。

 以上のような結果から、「父親が単身赴任することは子どもの学力に好影響を与えるが、母親が単身赴任することは子どもの学力向上に悪影響を与える」と結論づけてよいものだろうか。これについては、のちほど検討することにしたい。

父親の帰宅時間が遅いほうが子どもの学力が高い

 調査報告書では、「保護者の帰宅時間と子どもの学力の関係」についてもみているが、これも父親と母親では真逆の傾向がみられた。

 父親の場合、小学6年生でも中学3年生でも、そして国語でも算数・数学でも、「22時以降に帰宅する」家庭の子どもがもっとも学力が高く、帰宅時間が早い家庭の子どものほうが学力が低い傾向がみられる。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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