「炎上商法」という言葉がある。インターネット上であえて批判を受けそうな言動を行い、バッシングを受けることで知名度を上げる手法だ。
実は炎上商法の元祖には「せんとくん」がいる。せんとくんはそれまでの「ゆるキャラ」とは一線を画したデザインながら、奈良県の公式マスコットとなった。しかし当初は僧侶から「仏教をバカにしている」と公式撤回を求められ、調査では77.3%が公式キャラを変えたほうがいいと回答した。しかしその結果、マスコミへの露出が増え、広告換算費で15億円もの宣伝効果があった。
もっと有名な例では、ドナルド・トランプが過激な発言をSNSで繰り返すことで知名度や根強いファンを得たことも、炎上商法といえるだろう。したがってマーケティングを考えるうえで、「少しくらい炎上してでも、ファンを獲得する」戦略は否定できない。
炎上商法に、適したものは限られる
だからといって、炎上商法が「誰にでも使える道具」とは限らない。この原稿を書いているつい先週、ある女性がTwitterで炎上商法をして大火傷を負った。
その女性は外資系投資銀行へ新卒入社し、モデル業もやりながら育児にも励むスーパーウーマンだった。しかし、たった一言「損したことだって沢山ある。美人は辛いよ」という趣旨の投稿をして炎上した。
といっても、自称美人なだけで燃える個人などそういない。炎上のきっかけは、とあるインフルエンサーが「ブスども聞いてるか?」と彼女をさらすように共有したことに端を発する。その後、女性があえてインフルエンサーの指導に従い「自称美人」コメントを発していたことがわかり、さらに批判を浴びた。
結果、わずか1週間でSNSアカウントは消えてしまった。彼女はただ「自分を美人と呼んだ痛い人」として多くの人の心に残ってしまったのだ。炎上商法としては大失敗であろう。
炎上商法の「条件」とは?
なぜ、彼女は炎上商法で失敗したのか。それは炎上商法を扱う際の「条件」を満たしていなかったからだ。
まず、炎上商法をするならば「大量の批判を覚悟」する必要がある。炎上すれば誰もが石を投げるように、批判的な共有を繰り返す。一人ずつは小石を投げているつもりでも、燃えている側へは大量の石が飛んでくるのと同じだ。それに耐えうる鋼のような心を持つ人間はそういない。トランプはその意味で、稀有な炎上商法の才能を持っている。