「食品添加物は、食品安全委員会が安全性を評価」
イーストフードや乳化剤が有害だとの具体的な指摘があるのか探してみたが、インターネット上で個人が運営していると思われるサイトに、そのような意見が散見された。それらについて、山崎製パン広報に質してみた。
ネット上には、イーストフードは海外では禁止されているという記述があるが、これはどうなのだろうか。
「ネット上の記述については、情報の出所や根拠等について調べようもなく、当社ではお答えをいたしかねます。なお、『イーストフード』という一括名が使用されているのは日本だけです。また、食品表示法で『イーストフード』という一括名が使用されている食品添加物は18種類あります。食品添加物は、食品安全委員会が安全性を評価し、厚生労働省が食品安全委員会の評価結果を受けて使用基準を定めており、科学的根拠に基づいて評価、管理され、安全性が確保されています」
イーストフードという名称が使われているのが日本だけなら、海外で禁止されているということはないのだろう。イーストフードという一括名が認められている18種類のなかには、塩化アンモニウムがある。塩化アンモニウムをウサギに2グラム投与したところ10分後に死亡したという記述が、あるサイトでは見られた。
「ご質問のネット上の記述は、情報の出所や根拠等について調べようもなく、当社ではお答えをいたしかねます」
個人レベルで運営されているサイトでの記述なので、確かに確かめようがない。山崎製パンが上記メッセージを発信したにもかかわらず、他社の「イーストフード、乳化剤不使用」の表示は続いている。スーパーマーケットでは、値札の部分にまで同様の表示がされていることもある。今後の対策は考えられているのだろうか。
「現在、日本パン工業会並びに日本パン公正取引協議会において、お客様に誤認を与える恐れのある『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示をしないための自主基準作りを検討しています」
山崎製パンの売上高を見ると右肩上がりだ。他社の「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表示によって影響を受けているとは見受けられない。なぜ、メッセージを発したのだろうか。
「『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示が消費者に誤解を与える恐れがある表示であり、パン業界として適切な添加物表示のあり方を考える必要があることから、ホームページ上で当社の見解を表明するとともに、現在、日本パン工業会並びに日本パン公正取引協議会において、お客様に誤認を与える恐れのある『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示をしないための自主基準作りを検討しています」
パッケージで「イーストフード、乳化剤不使用」と強調しているパンにしても、イーストフードや乳化剤が有害だと書いているわけではない。だが「素材にこだわる」などの言葉が並べられると、あたかもそれらが有害であるかのようなイメージを与えられてしまう。
こうした手法は、他業種の広告などでも見ることがある。消費者は賢い判断をしなければならない。
(文=編集部)