90歳を過ぎた今も現役作家として活躍を続けている五木氏は長年、「体が発する信号=身体語」に耳を傾け、自身の不具合を治めてきた。長く健康でいられるには理由がある。五木氏はどのような養生論を実践しているのか。
噛む、飲む、歩く…「あたりまえ」の中にある健康の秘訣とは
『シン・養生論』(五木寛之著、幻冬舎刊)では、「歩行は10本の足指をフルに使って」「誤嚥を防ぐ嚥下のコツ」「ボケの始まりは“見る、聞く、触る”の遮断から」など、齢90を超えて進化し続ける五木寛之氏の心と体の整え方を紹介する。五木流の健康法の第一歩は、「噛むこと」と「飲みこむこと」から始まるという。人が生きるエネルギーのもとは食べること。そのための単純なメソッドが、「噛む」「飲む」の2つなのだ。
若いうちはいいが、年を重ねると歯も傷んでくるし、ちゃんと噛むということは簡単なようで難しい。歯の具合が悪いと、噛むときに左右どちらかの側に咀嚼が片寄りがちになる傾向が出てくるが、これを長年続けていると、自然に口が歪んでくる。また、人には利き手があるように、利き歯というものもある。厄介なものを噛むときには、左右どちらかの奥歯を使う癖がある。できれば左右均等にものを噛むことを心掛けるのが良い。
正面から顔を見て、口が上下左右どちらかに歪んでいる人は要注意。鏡を見て、口元が水平に保たれているかどうか確かめてみるといい。どちらかの口角が片寄って上がっていたり下がっていたりしていたら、噛み方に片寄りがあるのが原因かもしれない。
次に重要なのが「飲みこむこと」だ。誤嚥は命に関わる重大事だからだ。ちゃんと噛むことについては、誰もが念頭に置いているはず。しかし、噛んだものを飲むこむ段になると、ほとんど適当に気をつかわずに飲み込んでしまう。咀嚼と嚥下は一体の作業であるにもかかわらず、「飲みこむこと」には注意が払われていない。「飲みこむ」作業を意識化することが大切なのだ。
たとえば、水を飲むとき、「水を飲むぞ」とちゃんと体に伝達する。意識して自然に水が喉を通過する感覚を記憶して、常にそれを意識する。何度もやっているうちに、それが身につき、習慣化する。飲みこむなんで自然にできて当たり前と思わずに、普段から「飲みこむ」練習をすることが必要なのだ。
嚥下力、歩行法、ボケの効用など、五木氏が実践している健康法を紹介している本書。噛む、飲む、歩くといったことは生活の中で「あたりまえ」のことだが、そんなあたりまえの中にこそ健康のカギがある。年を重ね、心も身体も本調子ではないという人は、五木氏の養生論を実践してみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。