—自己分析等については、カウンセラーがアドバイスしているのではないですか?
水野 アドバイスはしますが、多くの場合、カウンセラーの経験に裏打ちされたものです。つまり各カウンセラーによって判断の尺度や基準が異なり、統一されていません。大切なことは、科学的に分析することで自己の傾向やパターンを正確に把握することです。
–企業の人事評価みたいですね。
水野 近いと思います。企業の人事評価はコンピテンシー(業績の高い人の行動特性)やEQ(心の知能指数)など、さまざまな基軸がありますが、自分らしく生き生きと婚活していくためには、自分自身の基軸を見つけることが不可欠です。
●男女の思考の違い
–出会いを、その先の恋愛につなげる秘訣はありますか?
水野 男女によって思考と行動が異なりますので、この違いを知らずに婚活の成功はあり得ません。むしろ、これらを知って相手に合わせた行動を取ることができれば、結婚への道は近づくと思います。
例えば、男性が京都旅行に行ったとして、それについて話すと、こんな感じになります。
「東京10時発の新幹線に乗って、京都へ12時に着いて、昼ごはんに湯豆腐を食べ、金閣寺に行って、時間が余ったので銀閣寺まで足を延ばしました。16時の新幹線で帰ってきました」
男性は会話しているつもりでいますが、単なる事象の報告です。
–何が足りないのでしょうか?
水野 女性が話すと、こんな感じになります。
「9時出発の新幹線だったので早起きしなければならなかったけれど、久々の旅でワクワクして目がさえちゃって、なかなか眠れませんでした。金閣寺に行って、紅葉を見ながら散歩しました。すごくきれいだったので、たくさん写真撮っちゃいました。お昼には精進料理食べたんですけど、お野菜がおいしかったです」
–随分男性とは違いますね。
水野 男女の会話の大きな違いは、論理的か感情的かです。女性からみたら男性の話は、「へえ、そうですか」という感じになります。言ってしまえば、ツマラナイのです。しかし、男性はどうしても論理的思考が優先されるので、そこに至る筋道や結論、理由、答えを話の中に求めがちです。
一方、女性は感情が先に立ちますから、脈絡はないけど気持ちは伝わります。どちらも良し悪しはありますが、恋愛に発展させたければ、感情的な会話のほうが相手の心に響きやすいです。
–男性にしてみれば、感情的な会話というのは難しいかもしれないですね。
水野 そうですね。男性は、女性と比べて相対的に「共感力」「表現力」が低いので、感情に寄り添うことや感情を表現することが苦手です。しかし、親しくなるにはお互いの感情を意識するような仲になることが必要です。婚活のシーンでも、仕事の話ばかりしている男性をよく見かけます。自分は何が楽しくて、何がうれしいのか、それが会話の中に見えてきません。女性が「条件は悪くない人だから、1回食事してみようかな」と思い、せっかくデートに至っても、共感できるような会話がなく「いい人だけど、つまらなかった」「どうしたいのか、何を考えているのかわからない」といった理由で、1回きりのデートで終わってしまうパターンがとても多いのです。
–多くの男性諸氏にとっては耳の痛い話かもしれません。
水野 男女平等とはいえ、こと恋愛シーンにおいては男性にリードを求められることが多いのが現状です。男性は女性の感情に寄り添い、また自分も感情を会話に乗せて表現することを意識して、上手に女性をエスコートしてほしいですね。
恋愛に至るには、学歴や、収入などの副次的要素もかかわってくることは間違いありません。ですが、学歴や収入はすぐには変えられません。しかし、自分の感情を表現したり、相手の感情を理解しようとすることは、意識することですぐにできるはずです。特にお金や時間をかけて自分磨きをしなくても、効果的な施策となるでしょう。
(文=尾藤克之/経営コンサルタント)
●尾藤克之(びとう・かつゆき)
東京都出身。経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。人間の内面にフォーカスしたEQメソッド導入に定評。リスクマネジメント協会「正会員認定資格HCRM」、ツヴァイ「結婚EQ診断」監修等の実績。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。