ビジネスジャーナル > ライフニュース > Mac、なぜ優れたパナのシェア侵食  > 2ページ目
NEW
山本康博「なぜあの商品はヒットしたのか/しないのか」(10月2日)

Mac、なぜ“優れモノ”レッツノートのシェア侵食?マーケ戦略でみる商品力

文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役

 例えば、ファッションでいうと、ハイブランドは飛び抜けて情緒的価値を提供するものだが、スポーツやアウトドアのウェアは性能や着心地といった物質的価値が重要になる。どちらがいい悪いというわけではなく、商品というのはそうした両面の価値のバランスのもとに成立する。

 マーケティングの視点から商品の価値を考察する時は、いつもこの2つの価値を意識する必要がある。商品のマーケティング戦略に応じて、2つの価値のバランスを最も適した状態にすることが成功には欠かせない。

Mac、なぜ“優れモノ”レッツノートのシェア侵食?マーケ戦略でみる商品力の画像3Copyright(c)2014 business Creations.Inc All Rights Reserved.

●情緒的価値のMac、物質的価値のレッツ

 Macはそのスタイリッシュなデザインや機能美で情緒的価値を押し出している。従来のビジネスユースのモバイルPCではさほどプッシュされてこなかった価値である。それがビジネスシーンでのMacの拡大につながっていると分析する。

 一方のレッツは物質的価値が売りである。実装から組立まで、フルで“Made in Japan(神戸)体制”を構築し、ユーザーの声を製品づくりにスピーディーに反映できる。加圧振動や落下、ヒンジの耐久など数々の過酷な試験を施し、「頑丈さ」を実現している。満員電車での揺れや圧迫、デスクからの落下などビジネスユースでは頻発する「アクシデント」を想定している点は、頭が下がる。バッテリーの持続時間もMacの倍以上である。

 つまり、情緒的価値ではMacに軍配が上がるが、物質的価値にかけてはMacはレッツの足元にも及ばないであろう。

 それでもMacのユーザーが増加しているということは、モバイルPCに情緒的価値を人々が求めるようになってきたということであろう。もはや機能面だけをプッシュすれば売れる時代ではないのである。それを使っているときの「気分」「ステイタス」「満足感」――従来のモバイルPCでは重視されていなかった価値である。

 Macがビジネスユースに支持されるようになったその他の理由としては、マイクロソフトのオフィスソフトウェア「Office」のMac版販売や、ブートで同社製OS「Windows」が起動できるようになった点が大きいことも付け加えておく。やはり「情緒」だけではダメで、「物質(機能)」も必須なのだ。

 もしも、マイクロソフトがアップルへOfficeを供給していなければ、ビジネスシーンでMacはここまで広がらなかったであろう。以前アップルが業績不振の際、マイクロソフトに身売りするという話があった。結局この買収話は実現しなかったが、IT業界にとってはよいことだったと思う。マイクロソフトの下でアップルがスマートフォンをつくるとは考えにくいからだ。

 競争があってこそ市場は活性化する。切磋琢磨しない業界は、市場自体の成長が鈍化するのだ。

山本康博

山本康博

ビジネス・バリュー・クリエイションズ
代表取締役、損保ジャパン顧問。ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、日本たばこ産業、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本制作。1年以上継続した商品は計算すると3割以上、メーカー側でマーケティング実績35年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、2016年スタンフォード大学 David Bradford 名誉教授、ボストンカレッジ Allan Cohen 教授の推薦書として、世界に向けて英著、 “Stick Out”a ninja in Japanese brand marketingを全世界同時発売開始。『Stick Out~a ninja marketer』(BVC)、現在ブレイク中で話題のAmazon書籍総合1位も獲得したベストセラー『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版)の一人として8月1日執筆など。

Mac、なぜ“優れモノ”レッツノートのシェア侵食?マーケ戦略でみる商品力のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!