「実は、この仲介業者(担当者)の”気持ち”が、のちのち非常に大切になります」と強調するのは、不動産業務に詳しいFP・通称きゃさりんさん。例えば、住宅ローンの事前審査や注文住宅の建築業者選定など、契約後に発生する仕事において、担当者の気持ちによっては、簡単に言えば「手抜き」をされる可能性があるという。この「手抜き」は「手抜き工事」といった違法な意味ではなく、あくまで質の善し悪しにかかわることで、法律的には問題ない。倫理的には疑問符がつくが、一般の人には手抜きをされているかどうかはなかなか見抜けないし、たとえ見抜いたとしても、法律的には問題はないので、正面切って文句を言うことは難しいだろう。
逆にいえば、仲介業者が提示した金額をそのままのむことで、その業者があなたのために良くしてくれるのであれば、結果的にはあなたにとってメリットになることがある。
たとえば、仲介業者に住宅ローンなどの条件交渉をしてもらったり、司法書士に登記申請を依頼する際に発生する報酬も、割り引いてくれることがある(司法書士への報酬は法律では決まっていない)。仲介業者にとっても、予定どおりの利益が出て、気分良く仕事ができる。そうなれば、何かトラブルが起きても、あなたのために親身になってくれる可能性が高くなるというわけである。お互いにWINーWINの関係になることが理想なのだ。つまり、単に仲介手数料を値切ればそれでいい、とは限らないのが不動産の難しいところである。
とはいえ、値切れるものなら値切りたいのは消費者の心情であろう。では、どうすればいいのか? きゃさりんさんは「同じ値切るのであれば、仲介手数料ではなく物件価格そのものの値切き交渉をするのがおすすめです」とアドバイスする。比較的高価な物件の場合であれば、もともとの利益が大きいので、値引き交渉にも応じてくれやすいという。さらに、仲介手数料より物件価格を値引いたほうが、値引き額が大きくなることが多いので、結果的におトクになる。物件や売却事情によるが、試してみる価値はある。そうした交渉において、仲介手数料、物件価格の値引きを両方とも応じてくれないような仲介業者であれば、変えたほうがいいだろう。
仲介手数料についてミスリードするような仲介業者は許されないが、そこだけにこだわって、みすみす良い物件を逃すのは悔しい。法律は法律できちんと理解した上で、”きれいごとだけではない”業界の実態もよく理解し、大人の対応ができる「賢い消費者」になることが大切といえよう。
(文=編集部)