野菜が持つ「ファイトケミカル」で帳消しにする
–本書には「ファイトケミカル」という聞き慣れない単語が登場しますが、一体どういったものですか?
髙橋 ファイトケミカルとは、植物に含まれている天然物質です。昔は「抗酸化物質」と呼ばれていました。ファイトケミカルには、端的に説明すると体のサビを防いだり、内臓の解毒をしてくれる効果があります。例えば、老化防止で代表的なものは、緑茶などに含まれているカテキンやトマトなどに含まれているリコピンなどが挙げられます。また、心筋梗塞や脳梗塞を予防する血液サラサラ効果が期待できる、タマネギなどに含まれるケルセチン、そばなどに含まれるルチンも代表的なファイトケミカルです。本書にも、そのほかのファイトケミカルを重要事項として図柄とともに紹介しています。
–ベジファーストしかり、「帳消し」にするためのポイントは野菜にあるという印象を受けますね。
髙橋 その通りです。ダイエットを成功させるためには、まず土台となる健康な体が必要となります。最近は「糖質制限ダイエット」や「炭水化物制限ダイエット」という言葉をよく耳にしますが、それらで制限する米は確かに炭水化物ですが、たんぱく質も多く含んでいます。米は、昔から日本人にとってたんぱく質の補充源の一つです。知識の浅いまま炭水化物を制限してしまうと、たんぱく質不足や、ひいては栄養失調を起こしてしまうケースもあるのです。それならば血糖値の上昇が遅く、インスリンの分泌を抑えられる玄米やそば、春雨、野菜など、グリセミック・インデックス値(GI値)の低い食べ物を意識して食べるほうがダイエットには効果的です。
–GI値に関しては、本書の中でも大きく扱っていますね。例えば、ブドウ糖をトップの100としたならば、90~99に食パンやフランスパン、80~90に白米やうどん、50~59に玄米、そば、中華麺などがあり、10~19にほうれん草やトマト、ひじきなどが紹介されています。
髙橋 GI値が低くファイトケミカルを含んでいる野菜を最初に食べるだけで健康的に痩せられ、中高年に多い肝臓の病気や脂肪肝の悩みも解消につながるでしょう。野菜の摂取量としては一日に350グラムから400グラム。理想としては朝昼晩の食事の中で70グラムずつ5皿の野菜を食べられるといいですね。肥満や重病ではない病気ならば、食べたものを帳消しにできるでしょう。
–最後に、健康とダイエットに励む読者にメッセージをお願いします。
髙橋 本書はすべて私自身がチャレンジし、大きな効果があったものを紹介しています。簡単で、努力の必要もそれほどありません。それは、ダイエットや健康には我慢をすることが一番よくないからです。食べ方を変える、食べる順番を工夫してみる、そういったメソッドで体はゆっくりとですが変化していきます。90キロあった私が75キロまで健康的に絞れたように、手に取ってくださった皆様にも必ず効果が表れる一冊だと信じています。そして、くれぐれも無茶なダイエットだけはしないでほしいですね。
–ありがとうございました。
(構成=東賢志/A4studio)
●髙橋弘 1951年生まれ。東京慈恵医科大学卒業。医学博士、ハーバード大学医学部内科元准教授、麻布医院院長。85年、ハーバード大学医学部留学。同大学付属マサチューセッツ総合病院にて助手、助教授を経てハーバード大学医学部内科准教授、慈恵医科大学教授となる。08年、医療法人社団ヴェリタス・メディカル・パートナーズ理事長。09年、麻布医院院長に就任。専門はガンと肝炎の治療。本書のほか『血管があなたの寿命を決めている』(大和書房)、『ガンにならない3つの食習慣』(ソフトバンククリエイティブ)など著書多数。米国ガン学会に正会員として名を連ねている。