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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べれば良いのか」

死に至るノロウイルスの恐怖 ふん便や空気、あらゆる食品から感染 毎年370万人感染

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 この2点には、人からの感染が関係しているようだ。ノロウイルスは患者の症状が消えても、1週間から1カ月程度は患者のふん便と共に排出される。同じ原因食品を食べても、半数程度はたとえ感染しても発症はしないが、ノロウイルスを排出する。

 ノロウイルスは85℃で1分間の加熱や、家庭用の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムを含む)で感染性を失い、消毒される【編注5】。ただノロウイルスは乾燥すれば空中を漂い、口から入って人に感染するので、患者が吐いた物やふん便で汚れた床などは塩素系漂白剤をかける。飲食店や家庭などでの消毒を徹底しなければ、ノロウイルスの悪循環システムを断つことはできない。

●全国で推定370万人が感染

 驚くべきデータがある。少し古いが、厚生労働省食中毒統計によれば、02~07年のノロウイルス食中毒の患者数年間平均は1万4000人程度だ。ところが、前出・食品安全委員会資料【編注3】によれば、同感染症発生動向調査を基に推定すると、その間のノロウイルスによる感染性胃腸炎の患者数年間平均は370万人にもなるという。知らないうちに感染している人が多く、誰もが感染リスクに晒されていることを意味しているようだ。

 もう1つ、ノロウイルス食中毒の季節性だ。04~13年の10年間の月別患者数平均で、確かに晩秋から早春の11~3月は約1500~4100人と多く、10月は約380人だが、4月は約950人もいる。5~10月の6ヵ月間は約60~380人と少ないが、夏でもゼロではない。「誰でも」に加え、「いつでも」感染可能というわけだ。

 最後に、人口動態統計では、死因がノロウイルスの急性胃腸炎による死亡者が、99~08年の10年間に58人と報告された【編注3】。ノロウイルスも決して死に無縁ではないことを、データが改めて示している。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

【編注1】厚生労働省「平成25年(13年)食中毒発生状況」

【編注2】日本獣医学会HP(重茂克彦・岩手大学農学部「ヒトの『ノロウイルス』は犬に感染しますか?」

【編注3】食品安全委員会「食品健康影響評価のためのリスクファイル及び今後の課題~食品中のノロウイルス~」(10年4月)

【編注4】厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会「ノロウイルス食中毒対策について(提言)」(07年10月12日)など

【編注5】厚労省「ノロウイルスに関するQ&A」など

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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