iPod、ソーシャルゲームのヒットに見る、家電メーカー復活のカギ?
そこでのユーザの行動はすべてログが取れるので、人々のインセンティブ設計に多大な関心を抱く経済学者や社会学者にとっては、宝の山だといえるでしょう。ソーシャルゲームの世界はサービス提供者から見て、永遠に変更可能な世界とも言えます。
このように出会うことない、モノづくりと変更可能なアプリの世界ですが、どこかで交わる可能性はあるのでしょうか?
イノベーションは何も最終製品に搭載されている技術だけでなく、生産工程やサービスの仕組みにも起こります。メーカーは生産工程におけるビッグデータ解析の可能性を探っていますし、ゲノム解析はコンピュータサイエンスの応用なくしては進まなかったでしょう。モノづくりとサービスの境界線にとらわれず、自由に考えたほうが何か起きそうです。ここでは、ダンプカーにGPSと無線LANを搭載する発想が必要になりそうです。
●ハードにもβ版的チューニング応用の可能性
前回、変更可能なハードである電子ブロックの記事を執筆した後に、色々な人と話をしたのですが、「自動車だってレゴブロックのようにモジュール化しつつあるのだから、複数の製品を共有部分と固有部分に分けて、固有部分をA/Bテスト的にユーザ反応を見ながら機動的につくり替えるのもありじゃないか」という話まで出てきました。
その文脈で、現在のテクノロジーで実現可能なことを考えると、例えばiPodのようなシリコンオーディオの汎用的なハード(中身)は、モジュールの組み合わせでメーカーがまずつくります。次にオプション機能やその筐体(ケース)部分はメーカーが用意したクラウドからユーザが好きなものをダウンロードして、3Dプリンターで製造してユーザがくっつけるというものが出てくる可能性があります。つまり家電製品なのに、固定的なハード部分と変更可能なハード部分に分かれて、最終消費者に提供されるという可能性です。「それってスマホのケースでは?」と言われればその通りですが、モノづくりのハードの世界におけるβ版的チューニングの応用の可能性と、それによってユーザが「付加価値と感じるモノ」を機動的に製品化するという手法は、まだまだ考えていきたいところです。
よく考えると、代表的な家電であるテレビのソフトウェアも知らないうちに自動でネットワーク経由でアップデートされていますし、3Dプリンターの一般化でハードがアップデートされたらちょっと面白いです。メーカーから「電気炊飯器の一部アップデートのお知らせ」が送られてくるわけです。「それって電子ブロックじゃん」と言われればその通りですが。
※本稿は筆者個人の意見であり、所属する団体等の見解ではないことをご了承ください。
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