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高杉康成「コンセプト・シナジーな経営戦略」

なぜスマートウォッチは売れないのか?「質」の重要性を認識できないビジネス界

文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

 一つ考えらえるのは、スポーツなどをする際、時間、自身の記録タイム、体の状態や活動量などが、一つのデバイスで見られるという部分は機能的な価値が高そうです。実際、そういった使い方をしている人も多いのではないでしょうか。

 しかしながら、ほかに決定的に便利なことを見つけるのは難しいです。つまり、スマートウォッチも現状では趣味・嗜好の域を出られず、「中途半端な製品」になっていると考えることができます。実際、スマートウォッチの国内販売台数は1000万個ぐらいと推測され、これだけハイテク装備が満載されている割には、腕時計の3分の1にも満たない台数しか売れていません。

 では、なぜもっと売れないのでしょうか。そこには一つのキーワードがあります。それは「作用」という考え方です。製品が持っている機能がどのように「作用」し、どのような役立ちを提供するかという考え方です。その役立ちが大きいほどその製品は売れることになります。

 先ほどの3つの分類での「作用」について考えてみましょう。「生体センサーによる機能」では、測定した自分の体温や心拍数を自分が見るという作用に限定されるでしょう。次の「スマホとの連動による機能」も、メールを読む、あるいはスマホを操作するという作用に限定されるでしょう。最後の「環境・活動量などを測定する機能」も見るという作用の域を出ることができません。

 つまり、今のスマートウォッチは、せっかくのハイテク装備を満載しても、その作用の多くは「見ること」だけに限られてしまうのです。しかも、ほかの代替方法で簡単に置き換わってしまう機能ばかりです。従って、スポーツシーンなどその作用が大きくなる場合を除いて、明らかに便利な価値を提供できていないと考えられるのです。このような見方からも、スマートウォッチが趣味・嗜好の域から出られない「中途半端な製品」であることが見てとれるでしょう。

作用が大きくなるつなぎ方は何か?

 では、どうすればもっと売れるようになるでしょうか。

 それは「見るだけの作用」から脱することです。IoT(モノのインターネット)の技術でスマートウォッチがさまざまなモノとつながることが、この作用を大きくしてくれる可能性を秘めているのです。

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

経営学修士、中小企業診断士、岡山県立大学地域創造戦略センター客員教授
神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程中退(経営学修士、MBA)。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を歴任。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から、中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる。一般消費者向けの小売店、ネット販売企業などにおいても、ビジネスモデルの転換、収益力向上、新製品開発などで数多くの実績がある。
最近では、次世代自動車(CASE)、次世代通信、ロボット、AI、IoT、VR・AR、農業クラウドサービスなど、さまざまな最先端・成長業界における新規参入の支援を、上場企業をはじめ全国の企業に行っている。こういった企業への指導実績から、テクノロジーについても非常に詳しく、最先端分野の知見を有している。専門分野は、ブルーオーシャン戦略、事業戦略、技術経営(MOT)、Webマーケティング。
コンセプトエナジー株式会社

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