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高杉康成「コンセプト・シナジーな経営戦略」

なぜスマートウォッチは売れないのか?「質」の重要性を認識できないビジネス界

文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

 ただ、これだと誰でもイメージできます。そこでの成功の鍵は「つながることで作用がどれだけ大きくなるか」。換言すれば「作用が大きくなるつなぎ方は何か」ということになります。

 たとえば、自動車とのコネクテッドを例に考えます。現代の車はハイブリッドカーが主流となっているため、非常に大きなバッテリーを積んでいます。従って、技術的にはエンジンをかけなくてもエアコンをつけることができます。これをコネクテッドの技術で活かすことができれば作用が大きくなりそうです。「酷暑の中、駐車場に向けて歩いていくと、自身のスマートウォッチが体温と発汗量を測定。それが自動で車に伝わり、車に到着する頃には室内が十分に冷えているため、ものすごく快適な状態が実現する」というようなイメージです。真夏の駐車場に止めた車に乗る際の猛烈な不快さと比較すると、この例の「作用」はものすごく大きくなります。

 スマートウォッチを子供に持たせれば、スマホ、GPS、扉の鍵などとのコネクテッドで、家に帰ったかどうか、塾に行ったかどうかなどがリアルタイムでわかるでしょう。それによって、親の安心感という大きな「作用」を提供することができるでしょう。

IoTの技術でコネクテッドが実現し、スマートウォッチの売り上げが拡大する」

 この見方だけだとあまりにも稚拙です。しかし世の中はそれだけで騒いでしまう。「作用の大きさ」という重要な視点を加えた戦略が立てられるかどうか。これがスマートウォッチの真の勝ち筋戦略の一つになるのではないでしょうか。

 製品の価値を分解し、市場の構造を見極めることで、イノベーションするような戦略をつくり出す。質の高い非常に重要なプロセスといえます。

 ビジネス書、ビジネス誌、ビジネススクールなど昨今のビジネスを学ぶ環境は多様化してきました。しかしながら、質(クオリティ)が圧倒的に足りないという矛盾も抱えています。しかも、当事者はそのことに気付いていないし気付く術もない。見方を変えれば、「質の重要性に気付いていないビジネス界」だからこそ、質を圧倒的に高めることが、ブルーオーシャン状態を生み出すチャンスになるといえるのではないでしょうか。
(文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士) 

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

経営学修士、中小企業診断士、岡山県立大学地域創造戦略センター客員教授
神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程中退(経営学修士、MBA)。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を歴任。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から、中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる。一般消費者向けの小売店、ネット販売企業などにおいても、ビジネスモデルの転換、収益力向上、新製品開発などで数多くの実績がある。
最近では、次世代自動車(CASE)、次世代通信、ロボット、AI、IoT、VR・AR、農業クラウドサービスなど、さまざまな最先端・成長業界における新規参入の支援を、上場企業をはじめ全国の企業に行っている。こういった企業への指導実績から、テクノロジーについても非常に詳しく、最先端分野の知見を有している。専門分野は、ブルーオーシャン戦略、事業戦略、技術経営(MOT)、Webマーケティング。
コンセプトエナジー株式会社

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