鈴木 広告収入で運営しています。change.orgのユーザーは、社会問題に関心が高く、自分たちでもなんらかのアクションをとりたいと思っている人です。そういう人たちに関心を持っているのが、社会問題を解決しようと活動しているNPOや市民団体なのです。日本ではまだなじみが薄いかもしれませんが、欧米のNPOはマーケティングのための予算を持ち、自分たちの活動を広報しています。そういう団体から私どもは、ユーザーとつながれる場所だということで、FacebookやGoogleなどの大手サイトよりも有効なサイトという評価を得ているのです。つまり、NPOが政府に働きかける時には、私どものサイトで署名を集めることもありますから、大きな支援団体やアメリカのトップ100に入るようなNPOのほとんどに、change.orgの広告主となっていただいています。
–しかし、サイト上にはバナー広告などは見当たりませんが。
鈴木 私どもの広告は、例えば動物愛護のキャンペーンにあるユーザーが賛同するとした時に、その後にウインドウが開いて、「この動物愛護団体はこういうキャンペーンをやっていますが、関心ありませんか?」というメッセージが現れ、そこに賛同すると、ユーザーはその団体のメールマガジンに同意の上登録されるというような仕組みで、ただ表示されるバナー広告と比べて、よりダイレクトにユーザーと結びつくことができる仕組みを備えています。
–日本のNPOで、すでに広告主になっているところはありますか?
鈴木 これからですね。日本では寄付文化がまだ浸透していないので、ほとんどのNPOがボランティアで活動しています。彼らは、自分たちがやっているプログラムが本当に大変で、余裕がない場合が多いため、あまり積極的に日本のNPOに働きかけることはしていません。それに、一つの国で50万人くらいのユーザーがいないとビジネスモデルが成り立ちませんから。アメリカ、イギリス、オーストラリア、スペイン以外は、とにかくユーザー数を増やすことが目下の課題ですね。
–ユーザー数や広告売り上げなど、現時点で具体的な数値目標はありますか?
鈴木 ベン・ラトレイ社長はスタンフォード大学出身で、エンジニアもシリコンバレーで育っているので、データ分析や数字に強いため、4半期ごとにユーザーの伸び、メディア獲得数などについて明確な目標値を設定します。そして、アメリカやイギリスなど、すでに収益化に成功している国の法人にはセールスチームがあり、広告主であるNPOに働きかけるという活動もしています。もちろん毎月のセールス目標もあり、そういう点は一般企業の営業と同じですよ。ただ、働きかけているところがNPOや社会団体、市民団体というだけです。
それからもう一つ重要な指標としてとらえているのは、立ち上がったキャンペーンのうち、5人以上の賛同者が集まったキャンペーンの数です。私どもとしては、すべてのキャンペーンがきちんと拡散されるようなサイトにしなければいけないと思っています。そのためには、発起人に対してそのキャンペーンを運営していくためのアドバイスをすることも大切で、ベストプラクティスは常に社内で共有しており、例えばイタリアで成功したキャンペーンの手法は、日本でも使えるというような仕組みが整っています。
–今後日本にオンライン署名、change.orgを根付かせていくための戦略について、教えてください。
鈴木 人口に対するchange.orgユーザーの比率が一番高いのは、スペインです。スペインは、人口2000万人のうち、300万人が私どものユーザーとなっており、change.orgで展開されているキャンペーンがもはや国レベルの政治を左右するまでになっているのです。今まで全然耳を傾けてもらえなかった人の意見でさえも、直接大統領に届けられるというようなことが毎月のように起きています。