ビジネスでは旧姓使用が当たり前に
内閣府男女共同参画局の調査によれば、結婚経験がある人の約半数は「旧姓を通称として使用している」あるいは「使用していたことがある」としている。一方、企業側も約半数に近い割合で、旧姓の通称使用を認めている。女性の社会進出やビジネスの国際化を考えれば、時代の流れとして、通称使用の割合は今後も増えこそすれ、減ることはないだろう。
通称にした場合、戸籍名と旧姓両方の印鑑を会社に置いておく必要があるかもしれない。仕事上、戸籍名で作成しなければならない書類もあるからだ。それはそれで面倒そうだが、それ以前に、銀行口座、クレジットカード、パスポート、免許証、健康保険証、病院の診察券などを、旧姓から婚姻後の姓に変更しなければならないのは大変な手間に違いない。金融機関、とくに証券会社においては、氏名変更で戸籍謄本の提出を求められる。
「専業主婦が多かった昔は、女性があまり財産を持たず、銀行口座も1つしか持たなかった。結婚すれば退職するので姓が変わっても問題ないとか。しかし、いまや女性も財産を持ち、複数の口座を持ち、ネットではIDをたくさん使う。初婚年齢が上がっているので、女性もそれなりの財産を築いてから結婚するケースが今後も増えていく」(青野社長)
現実の動きに合わせて、法律上も選択的夫婦別姓にしたほうが、シンプルで利便性が高いのではないか。
“選択的”を無視する同調圧力
夫婦別姓問題を議論するとき、大きなポイントは“選択的”と付いていることだ。訴訟は、夫婦同姓を禁止しようという話ではない。同姓か別姓かを「選べるようにしよう」ということを求めたものだ。同姓にしたい人はこれまで通り、同姓にすればよい。現状は、カップルの96%は女性が姓を変えているので、女性にとっての問題であると考えられがちだが、決してそうではない。「選択」という多様性を認めるかどうかが事の本質である。
その証拠に、選択的夫婦別姓に反対する人たちが持ち出す論拠として「伝統」や「家族の一体感」がある。しかし、戸籍法が制定されたのは1871年であり、それ以前に戸籍の概念はない。たかだか150年弱の「伝統」ということになる。